ついに一部の県で自粛解除(アフターコロナ)!でも、不安障害の症状が和らがないのはなぜ?どうしたらいい?
2020年5月15日。39県では緊急事態宣言が解除されました。まだコロナウィルスと共存する「新しい生活」を模索中ではありますが、飲食店では夜もお酒が提供されるなど、少しずつ明るさを取り戻す風景も見られました。しかし、そんななか不安障害の患者さんは不安や心配という感情に非常に敏感に感じ取って、「本当にいいの?」「大丈夫なの?」という感じを抱いているのではないでしょうか?
この記事では、アフターコロナで不安障害の症状が和らがないのはなぜかや、不安から距離を置くスキルの訓練法についてお話しします。
アフターコロナでも不安障害の症状が和らがないのはなぜ?
特に特別事情の下では、もともと心配性だった人や、不安障害・不安症の方たちは、さらに緊張感や不安が強く感じてしまいやすく、日常生活への影響も大きくなりがちです。この状な状況でどうして不安が悪化してしまうのか、あるいは不安が和らがない理由として、以下に説明をしております。
①先行きが全く見えない
「不安」というのは、「これから」がどうなるか分からない、もしかしたら「これから」何か悪いことが待ち受けているかもしれないと思うから生じる感情です。
コロナ感染症患者は日が経つごとに減少していますが、テレビでは第二波・第三波のコロナウィルスが出ると報道しています。現時点でも治療薬が完全には確立されていないなかで第二波・第三波が来てしまったらどうしようと考えて、不安が落ち着かないのです。
②これまでの我慢していた自粛ストレスで、ストレスへの許容量が小さくなっている
ストレスとストレスへの許容量は、蛇口から出てくる水とコップによく例えられます。ストレスが蛇口から出てくる水で、ストレスへの許容量がコップです。コップのなかの水が溢れたら、ストレスも溢れるという具合です。
本来、適宜コップから水をたまに捨てたり(つまりストレス発散)、蛇口を締める(つまりストレスの原因から離れる)ことで、ストレスが溢れないように調整します。しかし、緊急事態宣言のなかではずっと外出もせず我慢我慢だったので、コップには既に水がいっぱいいっぱいの状態です。コップの水を捨てる、つまり外に出てストレス発散できればよいのですが、不安障害の人の場合はまだ外に出ても安全だとは思えないのでストレス発散できません。そのため、許容量の小さいコップで何とかしないといけないのです。
③ストレスの原因が「逆に」増える
緊急事態宣言が解除された地域では、おそらく不安障害の人にとってのストレスが増える恐れがあります。それというのも、緊急事態宣言が解除されて出歩く人がいると、また感染者が増える恐れがあるからです。もちろん、出歩く人もお店も感染者を増やさないように注意を払っています。
しかし、元々心配性であったり、不安障害・不安症の人から見ると「まだ治療薬も完全にできていないのに…」とイライラしたり不安が大きく膨らんで、それで新たにストレスが溜まってしまうのです。
不安障害の人におすすめの不安から距離を置くスキルの訓練法
不安をそのままにしておいては、頭痛や肩こりなどの体の痛みや吐き気、めまい、動悸など様々な身体症状が悪化したり、不安のあまりずっと気分が落ち着かないといった精神症状、不眠症など多様な問題が起きます。
そうならないように、不安から距離を置くスキルとしてマインドフルネスがあります。
マインドフルネスとは「今、この瞬間」に対して意識を向けることです。イメージとしては、禅が近いと思われます。不安は悪いものだと否定しがちですが、マインドフルネスのあり方では「自分は不安を感じているんだな」と一歩離れた位置から自分を観察します。この「観察する」というあり方が不安と距離を取ることに繋がるので、不安の症状を和らげると言われています。
マインドフルネスのあり方を身につけるトレーニングとして、自分の呼吸に意識を向ける方法もあります。もちろん途中で注意が外れることもありますが、気にせず再び呼吸に注意を向けることを繰り返してください。このトレーニングを繰り返すことで、悪いことばかりに注意を向けず、距離を置くというスキルが身に着けられると言われています。
セルフコントロールの例として、レーズンエクササイズという方法を試してみてはいかがでしょうか?
もし自分の呼吸みたいに目に見えないものに注意を向けるのが苦手という方は、レーズンエクササイズと呼ばれるものもあります。レーズンエクササイズではその名の通り、レーズンを使った方法です。レーズンが苦手な人は小さい梅干しや粒チョコでもいいです。レーズンエクササイズではまず、初めてレーズンを見たかのように、レーズンを触るとどんな感触や弾力がするか、どんなにおいがするか、どんなふうに皺があるかなど丁寧に見ていきます。掌においてみて転がしてみるなど、丹念に観察しましょう。しっかり観察したら、レーズンを食べます。レーズンを食べる前に唾液が出てきたという感覚や、レーズンが唇に触れる感触、歯ごたえ、味などをしっかり味わい、最後に自分の体の中に飲み込まれていく感覚を意識しましょう。この訓練を繰り返すことで五感を研ぎ澄ませて集中するという感覚や、「自分」というものから離れて冷静に観察することができるようになると言われています。
まとめ
この記事ではアフターコロナで不安障害の症状が和らがないのはなぜかや、不安障害の人に不安から距離を置くスキルの訓練法をご紹介しました。
ただ、強い不安のせいで身体症状や精神症状が強く引き起こされている場合は、スキルによるセルフケアでは限界があります。専門家のいる心療内科クリニックなどに相談しましょう。
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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など