強迫性障害

強迫性障害とは

分離不安症について解説をしております

繰り返し不要と分かっているのに、止められない

強迫性障害の2つの側面

 

強迫性障害(OCD:Obsessive Compulsive Disorder)とは、強迫観念や強迫行為という2つの側面からなり、強い強迫観念にとらわれた状態を緩和しようと反応して、強迫行為を行ってしまうという状況がほとんどです。強迫性障害に特徴的なのは、その強迫行為や強迫観念・思考が理屈や道理に合わないと自覚している点です。不合理であると自覚しながらも、不安を解消するための行為や思考を自分の意に反して反復してしまうために、WHOの調査によると人々を長時間苦しめる精神疾患であるとも位置付けられております。

 

「分かっているのに自分で止められない」強迫性障害での苦しみ

「わかっていてもやめられない」という考えが、より一層本人を苦しめてしまうというのがこの強迫性障害の非常に厄介な点です。同じ思考を繰り返してしまう「強迫観念」が生じて、そうした思考を解消するために「強迫行動」を行うことで、一時的に不安は緩和されたように見え、強迫観念が生じるとそれをまた解消するためにまた同じ行為を繰り返してしまう。このように「強迫観念」からの「強迫行為」への実施という流れがサイクル化することで、その一連の行為が一層強化されてしまい、その一連の行為やサイクルそのものに費やされる時間が生活の中で大きくなってきてしまうのが強迫性障害です。本人は止めたいと思っていても、止めることで何か不吉なことや不都合なことが自分の身に起きるのではないかといった感情が浮かんでしまって、本人ですら中止することができないのです。

 

「人知れず悩んでいませんか??」うつ病などの併発にも注意

強迫性障害患者の多くは、自分のこだわりの思考や行動が特別であること。奇異であることや、不条理である、何とかして押さえたいという自覚を持っているため、人知れず思い悩む場合や、変だとか、恥らいの意識、自信の喪失感を持っている場合があります。また、強迫観念の内容によっては、自分の行動が相手を傷つけているのではないかといった罪の意識を感じていることもあります。そのような感情のために、思い悩み強迫性障害の他にうつ病や不眠、不安神経症などの精神疾患を併発される方も大勢みえます。

 

家族に手伝ってもらうことが、強迫症状の悪化につながることも

また加えて「巻き込み」といった、自身では不安が払拭しきることができず、その不安を解消するために脅迫行為を家族や自分の子供に確認してもらったり、その不安を払拭する行為を家族・子供と共に行うように指示したり、その準備を他者に手伝ってもらったりする「巻き込み」と呼ばれる状況に、強迫性障害が発展することもあります。本人と共にご家族がこの「巻き込み」に取り組んでみたところ、一時的にご本人の不安が解消されたかの様に見えますが、実際には、本人の強迫症状と強迫行為のサイクルをより強固なものにしてしまうという状況をさらに作り出してしまうのです。

 

実際そうでなくても、誰かを傷つけたかもしれないという強迫的な不安

ただし原則として強迫観念や強迫行為の対象は、ご自身に向けられたものであるため、これによってご本人が車で誰かを轢いてしまったのではないか、けがをさせてしまったのではないかなどの不安に駆られる非社会的な感情になったとしても、実際には本人が暴力や障害・犯罪のような反社会的行動を実際に起こすということは滅多にないといわれています。

 

強迫の症状や、その対処方法となる強迫の行為はみなさま多様です

また強迫症状に特徴的なのは、例えば、不潔や汚染などの強迫観念を持たれる方々は多くても、手洗い・お風呂や着替え行為(服なのか・タオルなのか・靴下なのか)、敷物の強要(新聞紙や、自分の持ち物等々)など強迫行為による個々の不安の対処方法は、みなさまそれぞれ異なるのが強迫性障害の特徴です。もちろん、一人の患者が複数種類の強迫症状を併せ持つこともあります。

 

あらゆる心配事が強迫観念の原因となり得ます

このように強迫性障害にある強迫症状の内容には個人差があり、人間のもつ、ありとあらゆる心配事(強迫観念)が要因となり得ることがあります。 その強迫観念を取り去ろうとして行われる強迫儀式や、反対に特定の事柄を避ける回避行動(手すりなどの共用物を触らないなど)も特徴です。

 

強迫性障害の発症メカニズムについて説明いたします

近年、強迫性障害の発症メカニズムとして有力視されていることは、大脳基底核‐辺縁系や、セロトニンやドーパミンを神経伝達物質とする神経系の機能異常によって、汚れの意識と認識、安全の確認などといった情報の伝達と整理が不十分になっているのではないかと考えられております。いずれもこのような状態の出現のきっかけはストレスフルな出来事やライフイベントのあと(出産・受験・転勤・昇進・引っ越しなど)で発症することもありますが、特別な思い当たるきっかけなしで徐々に症状が発症し進行・悪化するために、原因となるエピソードが本人にはっきりと見当たらないことも多々あります。

 

強迫性障害の方に多い特徴と傾向とは?

また、元々真面目、几帳面などの性格(強迫性格)の人に強迫性障害が多い傾向があるともいわれております。身体疾患としては、家族に自己免疫疾患がみえるかたは強迫性障害の発生リスクを上げるなどの報告もあるなど、なぜ強迫症状が続くのか、なにが影響して強迫症状が悪化するか、などは現在も解明が進行中の部分もございます。

 

強迫性障害は治療可能な疾患です。まずは心療内科へ

ただ、強迫性障害は近年、積極的に治療に取り組めば治ることが可能であると分かってきており、本人の困っている症状を踏まえて、薬物治療や精神療法などの治療方法が確立されてきております。強迫性障害は、その症状の特徴からも、ご本人自身がなかなか周囲に言い出せずに、本人もどうしたらよいのか分からずに経過してしまい、症状が強固になって、その人の生活を大きく影響させるようになってから受診される方も多いという点も特徴です。皆様、多くの方が苦しまれているご病気ですので、強迫性障害かもとお思いの方は、まずはお気軽に心療内科や精神科・メンタルクリニックへご相談されてみることをお勧めいたします。

 

強迫性障害の疫学について

強迫性障害の疫学はとしては、人種や国籍、性別の差はほとんどなく、発症する傾向があるといわれております。人口約2~3%は人生のある時点で強迫性障害の経験があるといわれております。はっきりとした性差もなく、35歳以降で初めて発症する方は少ないといわれており、半数以上は20歳以下での発症といわれております。しかし、もちろん壮年期に発症する場合もありますので、若年者特有の疾患ではないといわれております。

 

強迫性障害の症状について

症状
強迫性障害の症状としては、「強迫観念」や「強迫行為」からなります。

ここでいう「強迫観念」とは、繰り返しかつ持続的に、考えが継続し、そのような気持ちがおこりそうな衝動に駆られます。そのために、自分では不可避で不安や苦痛を引き起こすものです。

 

強迫観念の一例

汚染観念:「汚れてしまう」という考え
加害観念:「誤って他者を傷つけてしまうかもしれない」という考え
疑念観念:「悪いことが起きてしまうのでは」という考え

 

一方で「強迫行為」とは頻回の反復行動や、反復的な心の中での行為とされております。この行為は「強迫観念」に反応して駆り立てられた「行為」であり、何らかのルールに基づいて、「強迫行為」が起こっています。この行為を行うことにより、苦痛を緩和・予防したり、不快な出来事や状況を回避することを本人は目的としていますが、現実的にはそれが達成されないことも多いです。

 

強迫行為の一例

強迫的儀式:「これを行わないと何か大変なことがおこる」と思って繰り返し何かを行う
強迫衝動行為:「確認しなければならない」などの衝動や思いが強く、その行動を何度も行う
回避行為:特定の食べ物や音楽、数字などを避ける

 

ただしいずれも、「洞察」が保たれている状態です。つまり、強迫的な信念に対して、その誤りを認識していたり、信じている度合いが弱い場合が多いです。すなわち、「わかってはいるけど、やめられないんだ」といった状態ということです。また、患者本人が一人で悩んだり不適切な行動を行ったりしている「自己完結型」、家族や他社などのかかわりによって行動が維持・強化されている「まきこみ型」があります。

 

強迫性障害の治療について

 

治療

強迫性障害の治療には主に、薬物療法や、精神療法などがあります。

強迫性障害の方の中には、不合理な考えであるとご自身も自覚されている方が多いために周囲の誰にも症状の相談をできずに、抱え込んで落ち込んだり、自信を無くされている方が多いです。そのために、強い不安や・抑うつ(憂鬱)などの症状から、うつ病や不安神経症や不眠などの疾患を併発されている方が多いです。まずはSSRIなどの抗うつ薬を内服しながら、抑うつ・不安の症状や、ストレス症状の緩和と改善に努めます。また、強迫性障害の器質的な病院としても、脳内でのセロトニンがうまく機能していないと考えられているために、セロトニンに作用する抗うつ薬(SSRIなど)も強迫性障害の治療に効果があるといわれております。

その後、強迫性障害の中心的な「強迫観念」と「強迫行為」の強固なサイクルの見直しと改善のために、認知行動療法(CBT)や暴露反応妨害法(ERP)などの精神療法を行うことが望ましいとされております。

 

認知行動療法(CBT)や暴露反応妨害法(ERP)などの精神療法について

暴露反応妨害法(ERP)の一例を強迫性障害でご紹介させていただきます。不安度の低い強迫行為から止めてもらって(=反応妨害)、そのまま不安や罪悪感の程度を頻回にモニタリングして、ご自身の不安感情の推移がモニタリング範疇であることを繰り返し自覚してもらう方法です。モニタリング許容内の不安感情であると自覚し克服することを繰り返す事により、ご自身の感情のコントロールの成功体験として積み重ねることができます。そのような一連行為から強迫性障害による不安の低減を徐々に図るという治療行為です。

ただし、不安度の高い強迫行為に対してこのような療法を急に行ったり、信頼関係の築けていないカウンセラーと実施することは、反対に患者様のパニック発作などを誘発することがあるので、無理に療法を行うのではなく、あくまでも「一つ一つの成功を着実に重ねていく」という点が重要なのです。

 

強迫性障害の治療を行う上で重要なこと

治療においては、患者自身が直そうという意思を持っていることが重要となります。その件を維持するための心理的介入も必要となることもあります。

単に強迫行為などの症状を抹消しようとするのではなく、患者様にとっての意味や背景を知ることが、長期における治療においては必要となることがあります。

 

ひだまりこころクリニックは、名古屋市栄にある心療内科・精神科・メンタルクリニックです。久屋大通、矢場町、伏見、広小路からもアクセスが良好なので、お気軽にご相談ください。

 

あま市の「強迫性障害」の説明について

金山院の「強迫性障害」の説明について

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野村紀夫 監修

ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業

保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など

所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など

2019.06.102024.03.30

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