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2024.02.022024.04.01

性別違和~用語・診断基準~

性別違和~用語・診断基準~

性別違和とは、出生時に医師から指定された性と、その人が体験・表出している性との間に不一致が生じており、そのことに伴う苦痛を意味します。以前は性同一性障害と呼ばれていました。その後、性自認の問題ではなく、不一致による苦しみ・不快感に焦点を当てた疾患として性別違和の名前に変更された次第です。

この記事では、DSM-5に基づいて性別違和の用語や診断基準について解説します。

用語の確認

性別違和を説明するにあたり、いくつもの専門用語が出てきます。性別違和の診断基準を理解するうえで前提となる用語について、DSM-5に準拠して解説していきます。

・セックス(性)/セクシャル:

英単語「sex」には男女の性別と性的関心の2つの意味があるが、DSM-5では生物学的指標としての性を意味する
(例)性染色体や性腺、性ホルモン、内性器、外性器

・ジェンダー(性別):

男性あるいは女性としての公的な場面での性役割を示す

・ジェンダーの指定:

出生時に男性または女性として指定されたこと

・ジェンダーに非定型的/ジェンダーに整合しない:

その人が所属する社会、時代に生きている同じジェンダーに指定された人たちのほとんどとは異なる身体的特徴であること。また、異なる行動を取ることなど

・ジェンダーの再指定:

公的な場面でのジェンダーを変更すること。多くの場合、法律のうえでの手続きも含む

・性同一性:

男性あるいは女性、時にはその両者とも異なるカテゴリーとして自己を捉えること

・性別違和:

DSM-5では以下のように定義されている
「その人により経験または表出されるジェンダーと、指定されたジェンダーとの間の不一致に伴う苦痛を意味する」

・トランスジェンダー:

一時的にあるいは永続的に、出生時とは異なるジェンダーとして自己を捉える人々

・トランスセクシャル:

男性から女性へ、あるいは女性から男性への社会的移行を行った人を意味する。移行を終えた人だけではなく、模索している段階の人も含まれる。多くの場合、性転換ホルモン治療や生殖器手術などを行い、身体的にも異なる性に転換している

・異性間の性ホルモン治療:

出生時に男性と指定された人に対して女性ホルモンを使用すること。あるいは、出生時に女性と指定された人に対して男性ホルモンを使用すること

診断基準

性別違和には、子ども用と青年・成人用の2種類の診断基準があります。青年・成人用と比べ、子ども用の診断基準は具体的な行動様式によって定義されていることが特徴的です。なお若年青年はまさに第二次性徴の発達段階にあるため、同じ疾患を持つ子どもと成人のそれぞれの臨床上の特徴に部分的に類似していることもあります。

子どもの性別違和の診断基準

A. 以下のうち6つ以上について、出生時に医師から指定された性と、その人が体験・表出している性との間に著しい不一致が6か月以上見られる

なお、症状のうち1つは基準A1でなければならない

1.反対のジェンダーになりたいという強い欲求がある。あるいは、自身について指定されたジェンダーとは異なるジェンダーであると主張している

2.ジェンダーに非定型的な衣服を好む。また、ジェンダーに定型的な衣服の着用に強い抵抗感を抱く
※制服を着用しなければならないということから、学校行事や社交行事への参加を拒絶する場合もある

3.空想遊びやごっこ遊びなどにおいて、反対のジェンダーの役割を担いたいと強く要求する

4.反対のジェンダーの子どもに定型的な玩具やゲームなどを強く好む

5.反対のジェンダーの遊び友だちを非常に好ましく思う

6.ジェンダーに定型的な遊びを拒絶する
(例)出生時の性が男性の場合、乱暴で荒々しい遊びを避ける。ヒーロー人形や自動車を嫌がる
出生時の性が女性の場合、おめかしや、リカちゃん人形などを嫌がる

7.自分の性器の構造に強い嫌悪感を抱く

8.自分の体験するジェンダーに合う第一次性徴・第二次性徴を強く望む

B. 臨床的に意味のある苦痛、また学校や社会、他の重要な領域における機能の障害と、その状態は関連している

※先天性副腎過形成や男性ホルモン不応症候群などの性分化疾患を伴う場合、その疾患を特定しなければなりません。

青年および成人の性別違和の診断基準

A. 以下のうち2つ以上について、出生時に医師から指定された性と、その人が体験・表出している性との間に著しい不一致が6か月以上見られる

1.その人が体験・表出しているジェンダーと、第一次性徴・第二次性徴との間に著しい不一致がある

2.その人が体験・表出しているジェンダーとの間の著しい不一致のために、第一次性徴・第二次性徴から解放されたいと強く望む

3.反対のジェンダーの第一次性徴・第二次性徴が生じてほしいと強く望む

4.反対のジェンダーになりたいと強く望む

※4~6については、「反対のジェンダー」でもないジェンダー、すなわち「男性・女性という固定観念を超えた性同一性」のことがある。そのジェンダー役割を取り入れることで、ジェンダーの不一致という問題への自分なりの解決方法を見いだすこともある

5.反対のジェンダーとして扱われたいと強く望む

6.反対のジェンダーに定型的な感情や反応を自分は身に付けていると強く確信している

B. 臨床的に意味のある苦痛、また学校や社会、他の重要な領域における機能の障害と、その状態は関連している

※先天性副腎過形成や男性ホルモン不応症候群などの性分化疾患を伴う場合、その疾患を特定しなければなりません。
※法律上の性別変更の有無を問わず、患者が自身の望むジェンダーとしての生活を行っており、かつ新しいジェンダーの指定を援助するのに役立つ治療法(例 性転換ホルモン治療、性別適合手術など)を1つ以上行った場合は、「性別移行後」という特定用語が使用されます。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など