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2024.01.202024.05.03

解離性同一症~鑑別診断・治療など~

解離性同一症~鑑別診断・治療など~

解離性同一症に定まった治療方法はありません。原因や症状が複雑なことから、長期にわたって支持的療法を行い、少しずつ安定させていくこともあります。

この記事では、DSMに基づいて解離性健忘の鑑別診断と治療について説明します。

鑑別診断

解離性同一症は詐病と間違えられやすいですが、疾患の原因や症状の認識で両者には違いがあります。解離性同一症では原因や症状について恥や葛藤、混乱など様々な想いを抱いているものです。それに対して詐病ではむしろ症状を誇張したり、反社会的な行動の言い訳(例 窃盗に限った健忘)に利用したり、見られていることで症状が増強したりするなど、疾病利得といった感があります。そのため症状に対する不快感が見られません。

鑑別すべき他の疾患として、以下が挙げられます。

・感情障害
・精神病性障害 (幻覚や妄想、まとまりのない会話・行動などを呈する精神疾患。以前は「精神病」と呼ばれていた)
・不安症
・心的外傷後ストレス障害
・パーソナリティ障害
・神経認知障害
・神経学的障害、てんかん
・身体症状症
・その他の解離症
・深いトランス現象

経過と予後

治療を受けていない場合、その原因から解離性同一症の経過は悲観的であると推察されます。危険な行為の結果か自殺のため、数%は死亡すると考えられています。また、自分の子どもに心的外傷を与えてしまうことによる解離性同一症の家族内伝達が招かれる恐れもあります。

解離性同一症に以下が合併している場合、予後はさらに厳しいでしょう。

・器質的精神障害
・精神病性障害
・重度の身体疾患
・難治性の物質乱用
・摂食障害
・重度の反社会的パーソナリティ特性
・犯罪行為をして暴力的関係から離れようとしない
・成人になってから何度も心的外傷を負い、急性ストレス障害のエピソードを繰り返している

治療

心的外傷に対して、多くの場合精神療法と精神薬理学的療法を組み合わせて治療が行われます。精神療法は、患者さんが快く受け入れられる範囲で行うことが肝要です。

催眠

催眠療法を行うことによる効果は多岐に渡ります。

・自己破壊的な衝動を和らげる
・フラッシュバックや解離性幻覚、被影響体験などを軽減できる
・他のパーソナリティや、奥底にある記憶や感情などに接する
・リラックスした精神状態を作り出す

治療するうえで、一般の人と心的外傷を受けた人各々に対する催眠療法の訓練をきちんと受けなければなりません。また、催眠状態の記憶の正確な報告については様々な議論が行われています。この点を踏まえ、催眠を行う際には十分なインフォームドコンセントをしなければなりません。

精神薬理学的介入

症状に合わせて色々な薬が用いられます。抑うつ気分や強迫症状には抗うつ薬が用いられます。PTSDの過覚醒に対してはSSRIや三環系抗うつ薬、モノアミン酸化酵素、βブロッカーなどが、症状をある程度緩和させたと報告されています。また、リスペリドンやクエチアピンなどの非定型抗精神病薬のほうが定型抗精神病薬よりも解離性同一症の患者さんの切迫した不安やPTSDの侵入的な症状を改善させるのに有効であり、耐性も良いようです。患者さんの中には極度に混乱しており、症状が慢性化していて抗精神病薬に反応しない方もいます。そういった患者さんにはクロザピンによる治療が上手くいくことがあります。

電気けいれん療法

重度の解離性同一症で難治な抑うつ症状を呈する患者さんの場合、電気けいれん療法が功を奏すると臨床経験から考えられています。

認知療法

多くの場合解離性同一症の患者さんにも認知の歪みが見られますが、認知療法による治療反応はあまり見られません。また、成功したとしても不快な気分が生じることもあると報告されています。重症で長引く場合、生活上の不都合に対処することに焦点を置いた長期的な治療のほうが望ましいです。

付加的療法

付加的療法として以下が行われることがあります。解離性同一症の治療では「枠」を設けることが大事です。臨床的な保護がないと他の患者さんとの交流によって症状が増悪する恐れがあるため、集団療法や自助団体は避けたほうがよいでしょう。

家族療法

解離性同一症の患者さんは親密な接触を非常に恐れることもあります。そういったとき、患者さんだけではなく、パートナーもどうすれば助けになるか悩んでいます。家庭の病理や結婚に至るまでの課題に患者さんやその家族がともに取り組むことは、長期的な安定を得るうえでもとても大切なことです。

芸術療法や運動療法、作業療法

以下のような効果が見られるため、次の各治療は解離性同一症の治療に役立つと言われています。

・芸術療法…言葉にできない葛藤や感情などが表現され、症状が抑制される
・運動療法…患者さんの身体感覚や身体像を正常なものに戻す
・作業療法…集中して組織だった活動を行うトレーニングになる。これをきっかけに症状に対処できるようになることもある

眼球運動による脱感作と再処理法(Eye Movement Desensitization and Reprocessing; EMDR)

EMDRとは、心的外傷となった出来事を患者さんに思い出してもらいつつ、患者さんの目の前で一定の速度で動かされている治療者の指を目で追いかけてもらう治療方法です。眼球運動が行われることにより、脳が刺激されて情報処理が行われます。その結果、苦痛な記憶によるストレスが低減されたり、自己像が改善されたりするなどの効果が見られると考えられています。

現段階では、解離性同一症に対するEMDRの効果については肯定的な意見と否定的な意見があります。解離性同一症の患者さんにEMDRを実施するのは、特別にEMDRの訓練を受けており、かつ解離症の心的外傷面の治療に熟練した治療者に限ったほうがよいでしょう。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など