クリニックブログ

2023.09.042024.04.01

仮面うつ病について

仮面うつ病

うつ病の症状といえば、非常に落ち込んだ気分をイメージする方が多いと思います。しかし軽度のうつ病の場合、頭痛や腹痛、肩こりなどの身体症状が目立つ一方で「気分」にはあまり問題が見られないあるいは見えにくいこともあります。これらの身体症状の根本的な原因はうつ病ですので、身体科を受診しても症状を治すことはできません。

この記事では、仮面うつ病についてお話します。

名古屋市栄の心療内科,精神科,メンタルクリニックのひだまりこころクリニック栄院

仮面うつ病とは

英語では仮面うつ病をmasked depressionと表現します。maskの動詞の意味は「覆う・隠す」です。つまり、仮面うつ病とは身体症状で抑うつ気分をはじめとする気分症状が隠されたうつ病ということです。なお、仮面うつ病は正式な診断名ではありません。

仮面うつ病で見られる身体症状は様々です。頭痛や肩こりで悩む方がいれば、腹痛や下痢、便秘などで悩まれる方もいます。他にもだるさや息切れ、動悸なども身体症状としてよく見らます。また、特定の身体症状に悩んでいるのではなく、困っている症状が変わっていくことも多いです。

いずれにしろ身体面の悩みを抱えることになりますから、ほとんどの患者さんはまず身体科を受診します。しかし、症状の原因はうつ病であるため、いくら体の検査を行っても体には問題は見つかりません。また、対処療法としての薬を処方されても、仮面うつ病による身体症状は簡単には治りません。

また、仮面うつ病は症状が軽度であるうつ病であるとも言われています。患者さんが身体症状に注目している間は、気分の問題にはなかなか気づくことができません。そのため、身体症状を薬で緩和させている背後ではうつ病が徐々に悪化している恐れがあります。

仮面うつ病と関連するものー失感情症ー

仮面うつ病の患者さんは、抑うつ気分に少しずつ陥っていることや楽しい気分を少しずつ感じられなくなっていることに気づけないことも多いです。これは、うつ病の症状のひとつである思考抑制(ブレーキがかかっているかのように頭が回らなくなること。思考がゆっくりになるため、話すペースもゆっくりになる)によるものとは少し異なります。失感情症(アレキシサイミア)によるものでもあるのです。

失感情症とは、自分の感情の変化に気づきにくい、感情を言葉にして表すのが苦手という性格でもあります。「症」という文字が付いていますが、病気ではありません。元々は、心身症(ストレスによって生じた身体疾患。仮面うつ病と異なり検査によって病変が認められる)の患者さんにはこういった性格がよく見られるという文脈から出てきた概念です。

できるならばネガティブな感情はあまり感じたくないとは誰もが思うでしょう。しかし、ネガティブな感情にはSOS信号としての意味があります。例えば、怖いという感情を抱くから、近くにある危険なものから逃げる行動につながります。

また脳科学研究によると、自分の感情に気づけることは自分を客体化できることと関連があると言われています。つまり、失感情症の性格の人は自分の状態を客観的に認識することが苦手だということです。うつ病の大きな原因のひとつはストレスですが、自分を客体化できなければどれだけの負担が自分にかかっているか認識できませんこういったことも、失感情症の人が仮面うつ病になるメカニズムと言えるでしょう。

仮面うつ病の患者さんの治療における注意点

仮面うつ病の患者さんの中には、精神科や心療内科などの病院にたどり着くまでに身体科をいくつも受診されてきた方が多いです。というのも、問診や検査で原因が分かればよいのですが、仮面うつ病の身体症状の場合は何も分からないからです。そのため、痛み止めの薬を処方してもらったり、睡眠や食事などの生活習慣を見直すように指示されたりするばかりとなります。

身体的な問題がないので身体科ではどうしようもないとはいえ、「体はどこも悪くない」と言われることは患者さんにとって自分の苦しみを否定されるようなものです。また、いくら薬を飲んでも身体症状は治りません。仮面うつ病の患者さんの診察ではそのような経緯に配慮する必要があるでしょう。

また、初診のときに「自分はうつ病かもしれない」と思っている仮面うつ病の患者さんはあまりいません。そのため、抗うつ薬を処方されることに抵抗感を持たれる方も多いです。患者さんに納得してもらって治療を受けていただくためには、体に原因はない身体症状はうつ病によって生じることがあることや、少量のうつ病の治療薬で身体症状がかなり楽になることがあることなどを丁寧にお話するとよいでしょう。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など