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2023.12.262024.04.01

精神疾患の臨床試験におけるプラセボ反応の歴史

「プラセボ効果」という言葉を聞いたことがありますか?

「プラセボ効果」という言葉を、日常でも聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。プレセボの歴史は紀元前までさかのぼります。今回は、プラセボ効果とはどのような研究がされてきたのか、どのような効果が示されてきたのかということについて、精神疾患の臨床試験におけるプラセボ反応の歴史についてお伝えしたいと思います。

医学用語としての「プラセボ」

18世紀頃には、医学専門用語としてプラセボという言葉が使われていました。その後のプラセボの歴史は、臨床試験の発展と結びついています。臨床試験で見られるプラセボ効果 (placebo ef- fect)は、臨床試験でプラセボを投与された時に見られる生理学的な変化を指し、プラセボ反応 (placebo response) は臨床試験における実際の臨床症状の改善を指すことが多い傾向です。

臨床試験におけるプラセボ効果とその変遷

はじめに、プラセボのあゆみ、臨床試験の進歩、プラセボ反応の最近の動向について概要をお話します。

レプラセボの歴史

プラセボに関する研究は1990年代以降急速に増加しており、古代からの歴史とともに医学の進化と結びついて変化してきました。特に近年では、臨床試験デザインの進展がプラセボ反応の理解に不可欠であるとされています。プラセボ比較試験を洗練し実薬の発展に貢献しようとすること、そしてプラセボ反応そのものを臨床利用のためにコントロールしようとすることへとプラセボの利用が変遷してきました。

臨床試験の発展

プラセボは、臨床試験の発展と共に無治療群と治療群の比較、単盲検、二重盲検といったプラセボ比較試験など、方法が多様になってきました。 例を挙げると、プラセボ比較試験では、プラセボ反応よりも実際の薬効を引き立てようとする試みが行われてきたことです。 臨床試験が進歩すると同時に、徐々にプラセボ反応そのものに関心が向けられるようになってきたのです。現在では、プラセボ投与自体の非盲検と盲検化によって疼痛や過敏性腸症候群などにおけるプラセボ反応がどう変わるか、プラセボ投与に対して起こる生理学的な変化についての研究などが発展しつつあります。

プラセボ反応の最近の動向

プラセボ比較試験の進化によって、実薬の発展に貢献する時代になってきています。治療群と無治療群の比較や、盲検化などの手法がプラセボの取り扱い方を変え、実際の薬効を際立たせる試みが行われています。臨床試験の進展に伴い、プラセボ反応自体が注目され、非盲検と盲検化によるプラセボ投与の影響が研究されるようになってきました。これらの知見は、臨床でのプラセボ使用や薬の投与における科学的な説明をすることに貢献しています。

古代エジプトから18世紀までの歴史

それでは。ここで古代エジプトからのプラセボの歴史を簡単に紹介します。

ファラオの鼻の病も治療

プラセボは古くから存在していました。古代エジプトでは医師がファラオの鼻の病を治療した記録や、紀元前1900 年の医学に関するパピルス (象形文字で記された書)が残っているとされています。

メスリズム

18世紀にはMesmerによるメスメリズムが流行しました。メスリズムとはすべての生物が持つとされる目に見えない自然の力及び、それらを用いた医療技術のことをいいます。例えば、治療者が自らの磁気を患者に当てて、患者の磁気を乱すことによる治療などが行われていました。

プラセボによって発展した臨床試験

プラセボに関して、盲検化・二重盲検化などの方法が利用され、臨床試験も発展してきました。

盲検化

盲検化とは、患者が実験群と対照群のどちらに被験者が割り付けられているか、患者自身にわからないようにすることです。比較対照試験が科学的な有効性の検証手段として発展していく中で、効果の検証の際に被験者に治療の内容を盲検化することが行われるようになりました。1930年代にはドイツで盲検化が進化し、近代英語圏における盲検化試験はこの影響を受けて広まったのです。1930年代までに英語圏の研究者は臨床試験におけるプラセボ対照の使用を先導し、1940年代に発展しました。

精神科における臨床試験の歴史

精神科における臨床試験の歴史においては、1922年には躁うつ病統合失調症などの精神疾患に対する治療が検証され、1938年にはうつ症状のある女性に対するamphetamineのプラセボ対照二重盲検比較試験が行われました。二重盲とは、患者の他に試験に参加している医師にも患者がどちらに割りつけられているかわからないようにする方法です。1949年には、躁病興奮患者へのlithiumの効果が示され、精神病患者に対するchlorpromazineの臨床試験が行われました。1960年代以降は、抗精神病薬の導入とともにプラセボ比較試験が行われ、1970年代にかけて精神薬理学の黄金時代といわれるように、新薬の開発が相次いだのです。臨床試験では、プラセボが頻繁にする登場するようになりました。無作為化プラセボ対照比較試験においても、プラセボ反応の抑制や利用方法に関する研究も増加しています。

プラセボ反応自体に焦点を当てた検討

プラセボそのものに焦点を当て、疾患ごとの臨床試験が行われています。現在では、プラセボ・リードインという方法も用いられていますので紹介します。

疾患ごとの臨床試験におけるプラセボ反応

近年のプラセボに関する研究は、実薬群とプラセボ群のランダム化比較試験のデータをもとにした解析が主流ですが、疾患ごとの無治療群とプラセボ群の比較はほとんど行われていません。精神疾患において無治療とプラセボの比較が倫理的にも難しいのが現状です。しかし、2000年代には、精神科領域でも疾患ごとの臨床試験におけるプラセボ反応を扱った研究が増加しました。

プラセボ・リードイン

プラセボ研究の歴史の中で、プラセボ反応をどのようにコントロールできるかが注目され、プラセボ投与に関するデザインの工夫が行われてきました。最近では、プラセボ・リードインと呼ばれる方法が導入され、その効果の検証が進んでいます。プラセボ・リードインは、実際の介入の前にプラセボを使用して、過剰に反応する人を除外する方法です。しかし、その反応の基準や、実際にどの程度のプラセボ反応を抑えることが可能かは明らかになっていません。

まとめ

プラセボ反応に関する歴史を紀元前から近年まで見てきました。その歴史から、プラセボを科学的にコントロールする試みが行われてきたことがうかがえます。プラセボに対する医師の葛藤、倫理的な課題などがありますが、近年の非盲検の研究がヒントとなり、効果的な精神科疾患の治療の発展に貢献する可能性があります。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など