【パニック症にかかってしまった時】家族のケアや支援とは
パニック症にかかった時。家族のケアと支援について
パニック症の特徴であるパニック発作が起きたとき、ご家族の方はどのように対応したらよいのか、どのように支援し、どう接したら良いのか、不安や疑問に思われるご家族の方も少なくありません。
ここでは、ご家族がパニック症にかかったとき、家族のケアと支援についてを紹介しています。
パニック症の特徴とは
まずはパニック症の特徴についてご説明します。
【パニック発作とは】急峻な症状のピークを認め、心身に負荷の強い発作である
パニック症とは、数分から10分程度で急峻に悪化する、呼吸(息切れ・のどのつまり)や心臓(動悸・胸部不快感)、腹部(下痢や吐き気など)、神経(立ち眩み・現実感の喪失)といった、強烈な症状であるパニック発作が出現してしまう特徴があります。
【パニック発作とは】日常生活の中で予期せず、頻回にパニック発作が生じてしまう
これらの症状は、本来であれば、命の危機にさらされるような場面で起こる身体反応のはずなのですが、パニック症においては、家の中や外出先など、通常は恐怖の対象ではない日常生活の中で、突如かつ複数回パニック発作が起きてしまうということがパニック症の特徴でもあります。
【予期不安にも】パニック発作が起きるのが怖くなり、外出を控えるなど生活に支障が出てしまう
なによりも、パニック発作は死を覚悟する程、苦痛の強い発作でもあります。そのため、「また起きるのではないか?」「今度、発作が出たら自分はどうしたら良いのか…」のような【予期不安】として、パニック発作の出現に関する不安や緊張感が強まってしまいます。
そのため、パニック発作が出てしまうかもしれない状況や環境を少しでも避けようと、行動を回避したり制限してしまうことがあります。
【家族のケアと支援❶】治療や通院の支援
【通院のメリット】パニック発作や症状がコントロールされることで、日常生活や社会復帰への回復や調整が整いやすい
パニック症は、日常生活に制限と支障を来してしまうだけではなく、メンタル疾患の合併が比較的多いので、精神科,心療内科,メンタルクリニックの医療機関における継続の通院も大切です。
精神科,心療内科,メンタルクリニックでのパニック症の治療には、パニック症の薬物療法だけではなく、精神療法や認知行動療法などのパニック発作のコントロールも重要です。また定期的な通院を通して、急性期から慢性期の病状のコントロールと治療を継続しながら、社会復帰や日常生活の調整を進めていくことにも繋がります。
【医療機関の通院が必要な理由】パニック症は他のメンタル疾患の合併も多い
パニック症は、メンタル疾患の合併も多いと報告があり、パニック症の半分はうつ病や抑うつ症状などの合併、またパニック症以外の不安症である社交不安症や全般性不安症、強迫性障害の合併も多いと言われています。
このように、パニック症は次第に症状や病態が複雑になりやすいので、専門家への相談や治療は重要でもあります。
【医療機関への通院サポートも大切】パニック症に必要な治療を受けられ、症状の変化にも対応できる
そして、パニック症に対する治療が必要な時、また症状に変化があったとき、ご本人が適切なタイミングで医療機関に相談できるようご家族も一緒に、パニック症への治療の理解を深めながら、体調に応じた通院の支援とケアが必要とも言えます。
【家族のケアと支援❷】日常のケアと寄り添い
パニック症の特徴であるパニック発作は、日常生活の中で予期せず出現してしまうことがあります。
【家庭内や日々のケアとは?】孤立感を高めやすい雰囲気には注意
そして、パニック発作に対して、本人が「家族に迷惑をかけてはいけない」「パニック発作が出ていると家族が知ったらがっかりしてしまうかも」といった遠慮やためらいの為に、家族になかなか相談がしづらい雰囲気であると、より一層孤独感や孤立感を抱えてしまうことも少なくありません。
【不安を増大させすぎないとは?】劣等感や不安をあおりすぎるのもあまり適切ではない
かといって、「また発作が出ちゃったの?」「本当にかわいそうに」「そんなんで、あなた本当に大丈夫?」といった声掛けは、パニック発作は”悪いもの”・”出てはいけないもの”として、プレッシャーや恐怖や不安をより高めてしまいやすく、あまり適した声掛けとも言えません。
【適切な距離感とは?】寄り添い・安心感につながる声掛けやケアを
「無関心」「否定的な発言」「かわいそう」「深刻すぎる」という姿勢と声掛けではなく、【寄り添い】や、【安心感につながる】ケアとサポートはとても大切です。
【安心感にも繋がりやすい】寄りかかりすぎず。離れすぎずを『状況に応じて』
例えば、「私も傍にいるからね」、「大丈夫?何か手伝えることがあったら言ってね」のように、相手を尊重する声掛けが、時には良い時もあります。
また、場合や状況に応じては本人の様子を見ながらあえて、”そっと見守る姿勢に徹したり”
ご本人さんが混乱してしまっている時には落ち着けるように「大丈夫。大丈夫だよ」と手を添え、隣で積極的に声掛けをするなどの対応も、本人の様子を見て随時選択することは大切です。
しかし一方で、混乱してしまうほどの発作で苦しんでいる様子の時には「何かあったら声かけてね」「見守る」という判断は、ご本人にとっては不適切な場合もあるでしょう。
大切なことは『状況に応じて』。何よりも、寄り添いと安心感につながる、ご家族とご本人の適切な距離感とケアが、重要なのです。
最後に
パニック症に家族がかかってしまった時、身近な人である家族としてのケアや支援について解説をしました。
パニック症の治療として医療機関への適切な受診をサポートしたり、予期せず起きてしまうパニック発作への寄り添いや安心感につながる日常的なサポートと関わりは、大切なケアの一つと言えると思います。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など