クリニックブログ

2023.10.24

解離性健忘~鑑別診断・治療~

解離性健忘~鑑別診断・治療~

記憶の障害と一括りに言っても、色々なものがあります。解離性健忘を治療するうえでも、他の疾患との鑑別がとても大切です。この記事では、DSMに基づいて解離性健忘の鑑別診断と治療について説明します。

鑑別診断

解離性健忘と鑑別すべき疾患・物質は以下のように多岐に渡ります。

日常的な物忘れ、非病理的健忘

日常的な物忘れは解離性健忘と異なり、ストレスとなる出来事とは関係のない現象です。

また、病理的ではない健忘もあります。例えば幼児期のことをあまり思い出せない人は多いものですが、このような幼児期健忘は自然なものです。

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医学的疾患による認知症やせん妄、健忘性障害。外傷後健忘

健忘の原因として、医学的疾患による認知症やせん妄、健忘性障害、それらとは別に外傷性健忘などもあります。これらの場合、脳に器質的な問題が生じることが原因で健忘が生じます。代表例として以下が挙げられます。

・コルサコフ精神病(多くの場合アルコールの多量飲酒によって生じたウェルニッケ脳症の晩期合併症)
・脳血管性傷害
・手術後健忘
・感染症後健忘
・無酸素性健忘
・電気けいれん療法後の健忘

これらの原因の結果、記憶だけではなく認知や言語、注意、行動など広範囲領域で障害が引き起こされます。また、失われる記憶は心的外傷とは関係のない雑多なものであるという特徴もあります。

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てんかん

てんかん発作といえば、典型的には顔や手足がこわばってガクガク震えたかと思えば、急に脱力して倒れるというものです。しかし、複雑部分発作(突然ボーっとして、呼びかけられても応答しなくなる。手足や口が少し動いていたりすることはあるが、体の震えなどは見られない)を繰り返す患者さんの場合、記憶障害や易刺激性、暴力行為などを示すため、解離性健忘と似ていることもあります。この場合、脳波の遠隔測定装置や発作時記録などを使うことで両者を鑑別することができます。

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物質関連性健忘

健忘を引き起こす可能性のある医薬品・物質はたくさんあり、その代表的例として以下があります。

・アルコール
・鎮静催眠薬
・ステロイド
・抗コリン薬
・麻酔鎮痛剤
・低血糖薬
・βブロッカー
・炭酸リチウム
・メチルドバ(アルドメット)
・ベンタゾシン(ソセゴン)

一過性全健忘

解離性健忘と一過性全健忘(突然生じる一時的な記憶障害。健忘のきっかけとなった出来事以降に起きたことについて記憶できなくなる)は、出来事がきっかけとなり、それ以降の記憶を思い出せなくなるという点で似ています。しかし、一過性健忘には以下の特徴があります。

・突然発症する。原因は不明だが、てんかんや片頭痛などが関係している症例もある
※脳損傷が原因というわけではありませんが、リスクファクターとして50歳以上であること、脳血管障害などが挙げられます

・逆行性健忘(きっかけとなった出来事以前のことを思い出せなくなる)だけではなく、前向性健忘(きっかけとなった出来事以降に生じた新しいことを覚えられない)も見られる

・自己の同一性(自分がどんな性格であるか分かっている)について問題ない

・多くの場合、24時間以内に症状から回復する

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解離性同一症

解離性同一症(個人の中にひとつしか存在しないはずの性格が、複数存在する)の患者さんの多くが健忘も呈します。しかし、解離性同一症は解離性健忘より症状が過剰であるという特徴があります。一過性の記憶喪失や、とん走(連絡もなしに、自分がいま住んでいる土地から遠く離れた土地へ行くこと)だけではなく、説明できない執着、知識・習慣・スキルなどが変わったりするなどの症状が解離性同一症では見られることが多いです。

詐病、虚偽性健忘、作為症

詐病や虚偽性健忘、作為症などのいわゆる嘘の健忘と解離性健忘を区別することは簡単なことではありません。催眠状態にしたり、バルビツレートを服用させて脳を働きにくい状態にさせたりしても、患者さんは詐病を装い続けることができるからです。

治療

解離性健忘への治療として認知療法や催眠療法、薬物療法が挙げられます。

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認知療法

認知療法はうつ病や不安障害などの認知の歪みを修正するうえで有効ですが、心的外傷について特異的な認知の歪みを特定できれば、解離性健忘の治療でも役に立ちます。

催眠療法

催眠状態での面接は解離性健忘の患者さんの症状を評価したり、患者さんを支えて自我を強くしたり、解離した記憶を取り戻したりと、様々な効果を期待できます。

また患者さんに自己催眠療法を習得してもらうことも、治療の一手です。自己催眠療法により落ち着きを取り戻したり、自己制御能力を高めたりできるため、症状が現れても上手にコントロールできるという自信につなげられます。

薬物療法

薬物を投与することで、面接を行いやすくする効果を期待できます。これまで治療が功を奏しなかった難治性の慢性解離性健忘の患者さんについて、アモバルビタールやジアゼバム(セルシン)を静脈内注射してから面接をした場合、介入が上手くいったと報告されています。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など