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2023.10.242024.04.01

ためこみ症

ためこみ症

多くの方がゴミ屋敷のニュースを見たことがあると思います。ゴミ屋敷だからためこみ症を患っていると決め付けるのは早計ですが、ゴミ屋敷のニュースを思い出しながらこの記事を読むと、ためこみ症をよく理解できると思います。

この記事では、DSMに基づいてためこみ症について説明します

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臨床像

ためこみ症の特徴は以下の3つです。

①必要のない物や価値のない物を大量に集めてしまう。また、集めた物を捨てることができない

②集めた物のために生活環境が非常に散らかっている。その結果、歩いたり、座ったりなどの日常的な行動すら妨げられる

③集めた物に対して強い価値を持っていたり、愛着を持っていたりする。そのため、捨てることに対して非常に強い苦痛や罪悪感、怒りなどを感じる

DSM-5では特定用語として、病識について「十分」「不十分」「欠如」で記載します。ただ、ためこみ症の患者さんの多くは自身のためこみ行為は合理的なものであり、自分の性格上の特徴であると認識しています。そのためほとんどの場合、患者さんは病識を持っていません。

ただし、乱雑にためこまれた物が原因で本人が転倒するだけではなく、火事が起こることもあります。また、ためこんだ物が動物である場合には悪臭をはじめ衛生上の問題が生じることもあります。このような周囲を巻き込んだ問題となった結果、患者さんが立ち退きを要求されてしまうことも決して少なくはないでしょう。

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物をたくさん集めてしまうパターンとして、躁病で気分が高揚したために物を買いすぎてしまう場合や、衝動買いなどもありますが、いずれもためこみ症の場合とは異なります。ためこみ症の場合は買いすぎるからというより、捨てられないから物をためこむことになります。「いつか役立つかもしれないから」「忘れてしまうと困るから」「思い出があるから」と言って物を捨てません。そのため発症時期は青年期早期と早いものの、生活環境に問題が及ぶまでには時間がかかります。

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強迫症との違い

ためこみ症は、かつては強迫症のひとつと見なされていましたが、現在では独立した疾患として扱われています。両者には以下の違いがあります。

①侵入思考や強迫行為といった強迫症の古典的な症状は、ためこみ症では見られない

②強迫症と異なり、ためこみ症は時間とともに悪化していく

③強迫症の患者さんには病識はあるが、ためこみ症の患者さんには病識はないことがほとんどである

④強迫症の患者さんにとって症状は自我違和的であり苦痛を感じる。ためこみ症の患者さんにとって症状は自我親和的であり、苦痛を感じない

⑤強迫症と異なり、ためこみ症には薬物療法も認知行動療法もあまり効果が見られない

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疫学

ためこみ症の有病率は、一般人口の2~5%と言われています。また、生涯有病率は14%であるため、珍しい病気ではないです。

単身者に多い、社交不安や引きこもり、依存的性格傾向などと関連すると言われています。

病因

ためこみ症の病因についての知見はほとんどありません。ただし、家族性に起こるという報告があります。ためこみ行動を行う人の80%には、第一度近親者(親、兄弟姉妹、子ども)に同様にためこみ行動を行う人が少なくとも1人はいるようです。

生物学的な研究によると、ためこみ行動を行う人は後帯状皮質と後頭葉皮質の代謝活動が低下していると言われています。これらの問題が、ためこんだ物の実際の価値・状態などに目を向けられない注意欠損や、捨てられないという意思決定力の欠如につながっていると考えられます。ほかにも、ためこみ行動と関連する遺伝子の存在が示唆されています。

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併存症

ためこみ症と最も併存しやすいのは強迫症です。強迫症の30%にためこみ行為が見られます。また、注意や実行機能に問題がある点からADHDに類似していることから伺える通り、ためこみ症とADHDも併存しやすいです。ためこみ症の患者さんの20%がADHDの診断基準を満たすことが分かっています。ほかにためこみ症と関連するものとして、様々なパーソナリティ障害や摂食障害、うつ病不安症群(特に全般不安症社交不安症)、物質使用障害(特にアルコール依存)、窃盗症、病的賭博などが挙げられます。

鑑別診断

ためこみ症以外にも、ためこみ行為に他の身体疾患や精神疾患が関与していることがあります。例えば重症例の統合失調症では、妄想や自己への無関心などからためこみ行為が行われることがあります。また、脳病変の後にためこみ行為をするようになったケースも鑑別すべきです。そういったケースの場合、ためこみ症と異なり集めた物への愛着はありません。目的なく物をためこんでしまうことが多いです。ほか、認知症でもためこみ行為が見られます。物を隠す、逆にひっかきまわして探す、反復行為、盗み、過食などの症状とともに見られることが多いです。ただし、認知症が進行するにつれ、だんだん目的のないためこみ行為になっていきます。

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治療

「強迫症との違い」で書いた通り、ためこみ症には治療が功を奏しないことが多いです。その理由として、患者さんがためこみ行為を問題と認識していないことや、治療意欲が低いことなどが挙げられます。ある研究によると、薬物療法と認知行動療法をためこみ症の患者さんに行ったところ、効果が見られたのは18%しかいなかったことが報告されています。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など