クリニックブログ

2023.07.142024.04.01

自律神経失調症と出やすい症状について

自律神経失調症

検査をしても症状の原因が見つからない、症状の深刻さと患者さんの訴えが釣り合っていないなど、患者さんの症状を上手く説明できないことがあります。そういった場合、自律神経失調症という仮の診断名が付けられることもあります。

この記事では、自律神経失調症や、そのベースとなる自律神経などについてお話します。

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自律神経失調症とは

自律神経失調症とは、「自律神経」のバランスが崩れた結果として心身に何らかの症状が出ている状態です。「自律神経」については、次にお話します。

自律神経失調症は正式な診断名ではありません。しかし、耳にする機会は少なくなく、ガイドライン内に確立された診断名ではなくとも、実際の臨床でも「自律神経失調症」という病名は多く使用されています。慢性的な身体症状が起きていて、身体検査上は異常が見られずかつその症状に対して患者さんが苦痛や心配を抱いている場合、内科で「自律神経失調症」と診断されたり、精神科や心療内科などで「身体症状症」や「自律神経失調症」という診断名が下されることは良くあるからです。

もし抑うつ気分のほうが症状として目立ち、それに頭痛や肩こりなどの身体症状が付属している場合は「軽度のうつ病」と診断することもあるでしょう。

身体症状が主で生じている時

しかし、身体症状の治療ために患者さんがまず、精神科や心療内科を最初に訪れることはほぼありません。しかし、身体科を受診したときに暫定的でも病名が付くことで、いつまでたってもはっきりしない自分のカラダやココロの不調に「診断名」がついたことは、少しの安心感と治療という方向へと徐々に意識を向けることが可能となります。

また、「自律神経失調症」という名前を症状に付けることで、対症治療を施しつつ患者さんにストレスに注意してもらう生活も意識してもらいやすくなります。

というのも時に、「自律神経失調症」はストレスが大きく関与していることも多いのと、自律神経失調症は昔からも用いられてきた名前でもあるため、対処法や同じ環境や境遇で困っていた方の話や何の科をかかったら良いのかをネットやスマホで昨今は調べやすいという特徴もあります。

自律神経とは

人間の体には、自分で命令して動かす随意神経と、自分では命令できず自動的に動いている不随意神経があります。不随意神経のひとつに、今回のテーマである自律神経があります。

自律神経は交感神経系と副交感神経系に分けられますが、いずれも体の状態を調整する働きを担っています。例えば走り出したら心拍を早くするけど眠るときには心拍を遅くする、重い荷物を持つときには血管を収縮させて力強く動けるようにする、食事をしたら胃液をたくさん分泌して消化しやすくする。

副交感神経と交感神経の役割とは

これら全て自律神経が調整してくれたものですが、交感神経系と副交感神経系で担当が違います。車で例えると交感神経系はアクセルの役割があり、体を動かしやすくしてくれます。先の例でいうと心拍を早くしたり、血管を収縮させたりするのは交感神経系の働きです。反対に副交感神経系はブレーキの役割があり、体を休みやすい状態にしてくれます。心拍を遅くしたり、胃液をたくさん分泌したりするのは副交感神経系の役割です。

自律神経のバランスが崩れると…

活動するときには交感神経系がメインで働き、休むときには副交感神経系がメインで働く。このバランスが崩れたり、適材適所で働かなくなったりすると、自律神経失調症の症状が出てきます。例えば過労状態、つまり常に仕事をしている状態でいると、交感神経系ばかりが働き続けてしまうことになります。そうすると常に血管が収縮した状態になるので、肩こりや頭痛などが起きてしまうのです。

また、夜間業務のように本来は休むべき夜に副交感神経系をメインで働かせ続けることは、精神面だけではなく身体面でもオンとオフの切り替えをしづらい状態を生み出してしまいます。そうすると、本来は交感神経系がメインで働くときにも副交感神経系が働いてしまうことになります。自分では動こうと思っていても体がブレーキをかけてしまい、立ちくらみや怠さなどが出てくることにつながるのです。

どんな自律神経失調症の症状が出やすいのか

自律神経のバランスが崩れたときにどんな症状が出るかは、その人の体質によって異なります。常に緊張状態にある人は頭痛や肩こりなどが起こりやすい一方で、お腹が弱い人は腹痛が起きやすいです。また、体の痛みではなくメンタルや睡眠の問題として症状が出ることもあれば、複数の症状が同時に見られることもあります。

自律神経のバランスを整えるには

自律神経のバランスを崩す一番の原因は、ストレスです。ここでいうストレスは、人間関係や仕事などの悩みという狭義のものではなく、私たちの心身にかかっている何らかのゆがみや圧力というストレスの語源に近いものです。人間関係や仕事などの悩みは当然のこと、食事や睡眠、運動などの生活習慣も自律神経のバランスを整えるうえで大切と言えます。もしかしたら「頭痛は少しあるけど、仕事は楽しいし悩みはない」という方もいるかもしれません。しかし、本人はしんどいと感じていないけど、体はSOSをあげているというパターンもあります。このような場合も、いま一度自分の生活を見直したほうがよいでしょう。

自律神経のバランスを整えるには

自律神経のバランスを整えるの方法のひとつとして、生活にメリハリをつけることも有効だと思われます。つまり、休むときにはしっかり休むということです。好みはあると思いますが、日中にしっかり運動して体を疲れさせ、夜は早めに就寝するというのは、メリハリをつけるうえで手法のひとつだと思います。また、私たちの生活はスマホなしでは成り立ちませんが、そのことで脳は過活動な情報に陥っていると言えます。そのため、なるべくなら休むときにはスマホやパソコンなどからは距離を置いたほうがよいでしょう。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など