クリニックブログ

2023.07.142024.04.01

強迫性障害「強迫症および関連症群」について

強迫性障害

全般性不安障害社交不安障害などと同様に、一昔前までは強迫性障害不安障害のひとつに分類されていました。しかしDSM-5に改定されるにあたり、強迫性障害および関連する疾患は「強迫症および関連症群」という新たなカテゴリーに分類されるようになりました。

この記事では、強迫性障害をメインに関連疾患などについてお話します。

強迫性障害とは

強迫性障害とは、不安を引き起こすような考えやイメージが急に頭によぎるため、その不安を解消させるための行動を取らざるを得なくなる精神疾患のことです。前者の不安を引き起こす考えは強迫観念と呼ばれ、後者の不安を解消しようとする行動は強迫行為と呼ばれます。強迫観念と強迫行為はセットではなく、どちらかの症状だけが見られる患者さんもいます

強迫性障害で有名な症状は確認強迫や洗浄強迫があります。

外出するときに鍵を閉めたはずなのに「ちゃんと鍵を閉めたかな…」と不安になり、何度もドアをガチャガチャして確認するのが、確認強迫の一例です。同様に、帰宅して手洗いやうがいをしたときに「まだウイルスが喉や手に付いているかも…」と考え、長時間にわたってうがいや手洗いをし続けるのが、洗浄強迫の一例です。

忘れっぽい性格や心配性な性格などもありますが、強迫行為はそういった性格によるものではありません。患者さん自身も「ちゃんと鍵を閉めた」とは分かっています。それでもどうしても不安になってしまい、意味がないのは分かっていても何度も確認したり手洗いしたりをせざるを得ないのが強迫行為です。自分の行動の不合理性は患者さんも認識しているため、強迫行為は患者さんにとって苦痛なものです。なお、パチンコやアルコールへの依存行為も「止めることができない行動」と表現されますが、こういった快楽へおぼれた行動は強迫行為ではありません。

強迫性障害と不合理な信念

うつ病に関連する考え方としても認知の歪み(白黒で考えないと気が済まない、~しなければならないと考えるなどのネガティブな方向に歪んだ考え方)があるように、強迫性障害に関連する考え方としても、不合理な信念と呼ばれるものがあります。不合理な信念には以下が挙げられます。

過剰な責任感

「もし自分がその行動(強迫行為)を取らなければ、とんでもない事態が起きるに違いない」といった考えです。例えば、自分が鍵を閉めなければ家に泥棒が入るに違いない(あるいは何か不吉なことが起こるかもしれない)と考えるため、患者さんは強迫行為をせざるを得なくなります。

恐怖の過剰評価傾向

自分が強迫行為をしない結果生じる事態を過剰に深刻に見積もるというものです。もし玄関の鍵が閉まっていないとしても、泥棒が家に入るとは限りません。おそらく、多くの場合は何事も起きないと思います。しかし、強迫性障害の患者さんの場合は泥棒が入る、盗聴器を仕掛けられるなど、過剰に深刻な事態を想像する傾向にあります。

完全主義

完全主義の性格の中でも、「少しのミスもあってはならない」という傾向が強迫性障害の患者さんは高いです。これは、ミス(例えばやり残しや洗い残しなど)があったら、重大な問題が起こると不安になることにつながり、そうして強迫行為につながります。

不確かさへの不耐性

きちんとしたいという欲求が強いあまり、不確かな状態に耐えられないことです。「鍵を閉めたっけ?」というときに、鍵が閉まっているという状態を確定させたいため、強迫行為をし続けることにつながります。

思考の過度の重要性

「倫理に反する残酷なことや卑猥なことを考えることは許されない」と厳しく考えることは、そのような考えを実際に実行することと同じぐらい許されないことだと思うことです。

「強迫症および関連症群」に含まれる症状や疾患

強迫性障害で特に有名なものは確認強迫や洗浄強迫ですが、「強迫症および関連症群」に含まれる症状には以下もあります。

・対称…(例)物の配置への強すぎるこだわり。自分が決めた順序で行動できないと何度もやり直すなど
・禁断的思考…(例)考えたくもないのに暴力的な考えや性的な考えが浮かぶ
・加害…(例)家族を傷つけるのではないかという強迫観念が生じて、包丁やフォークなどを遠ざけるなど

関連症群の中には醜形恐怖症ためこみ症などがあります。醜形恐怖症とは、他者からは特に問題なく見えているにもかかわらず、「私の顔は気持ち悪い」などと自分の外見を悪く感じ、そのことにとらわれた状態のことです。

強迫性障害と同様、悩みや不安を解消するために化粧をする、他の人から「あなたの顔はかわいいよ」と言ってもらうなどの行動を繰り返し行ったり、鏡を見続けることがやめられなくなることもあります。

ためこみ症では、自分が手に入れたものを捨てることに苦痛や困難を抱えるため、生活空間が物であふれてしまうことになります。ゴミ屋敷がしばしばニュースで取り上げられますが、ためこみ症が関係していると考えられます。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など