クリニックブログ

2023.10.242024.04.01

ストレスマネジメント

ストレスマネジメント

新型コロナウイルスの影響を抜きに考えても、医療職はストレスの多い仕事と言えます。もちろん、医療職に特殊さがあるというのではなく、営業職・事務職・教職といった分野を超えて、職場の上司や責任ある人達すべてにおいて言えることでもあります。

ストレスの多い原因には仕事の量的な負担が多いことや、自分で自由に仕事できる(裁量度)ことが少ないことなどいくつもあります。そのなかでも職種に関係なくストレスに共通する問題として、感情労働が挙げられます。

ストレスを軽減するうえで、ストレスの特徴を把握することは大切なことです。この記事では感情労働に注目してストレスマネジメントを解説します。

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感情労働とは

感情労働という言葉から、肉体労働や頭脳労働などを連想された方も多いと思います。肉体労働が体力や筋力などを要求する仕事、頭脳労働が高度な情報処理や知識を要求する仕事と表現されるように、感情労働とは感情のコントロールを要求する仕事のことです。

例えば家族やパートナーなどから小言を言われたら、誰だってイライラするものです。でも患者さんの前では穏やかでいなければいけないので、出勤したら気持ちを切り替えると思います。また患者さんの中には、非常につらい人生を歩まれてこられた方もいます。そんな患者さんの話は胸が痛くなるものです。患者さんの痛みに共感することは大切ですが、その想いを抱えたままでは仕事を回せなくなるため、フラットな気持ちを維持しようと努力するでしょう。

例えば学校の業界でも、悲しいことですがモンスター・ペアレント(ハラスメントレベルで理不尽な要求をする患者)と呼ばれるような保護者さんもいます。こういった方を逆なでしないように、落ち着いた冷静な対応が求められます。これら全て感情労働です。今回は学校における例を挙げてみましたが、このように学校の教師は自分の感情をコントロールして患者さんやその家族に適切に接しなければなりません。理想の教師・上司という仮面(ペルソナ)をかぶって働いているとも言えるでしょう。

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感情労働のストレス

肉体労働や頭脳労働とは違ったストレスが、感情労働にはあります。

①ストレスと認識されにくい

教師は子どもに穏やかに接するものだと誰もが思うでしょう。また医療従事者は患者さんや家族に穏やかに接するものだと誰もが思うでしょう。更に上司は部下に穏やかに接するものだと誰しもが思うでしょう。

しかし、感情労働は行って当たり前であるという考えにつながる危険があります。当たり前のことですが先生は生徒と同じ人間です、そして上司も同じ人間ですし、医療従事者であっても患者さんと同じ人間であるため、コンディションが悪いときもあります。そのようなときにも穏やかでいるというのは、心のエネルギーをたくさん使うことです。

また、教師や上司更に医療従事者自身も「自分は上司あるいは教師や医療職だから、穏やかに接するのが当たり前なんだ」と考えてしまい、自分が無理をしているのにそれに気づかないという問題があります。これは、「生徒や患者さんの前で穏やかでいられないなんて教職や医療職としてあり得ない」と自分を責めてしまうことにつながる恐れもあります。

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②ストレスから回復しにくい

労働内容に合った回復方法があるものです。例えば、肉体労働は睡眠やマッサージなどで体を休めることで回復します。頭脳労働は美しい景色を見たり、ぼんやりしたりすること、つまり脳を休めることで回復します。では、感情労働からはどうすれば回復すると思いますか?肉体労働や頭脳労働のパターンから、感情を休ませればよいと考えるかもしれません。

でも、休みの日に家にいても仕事のことをふと考えてしまうことがあると思います。仕事とプライベートで思考や感情をはっきり切り替えるのは難しいため、感情労働によるストレスから回復しにくいのです。

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感情労働によるストレスのマネジメント方法

感情労働は「仕事として当たり前」と考えてしまいやすいため、感情労働できないことに対して自分を責めてしまう医療従事者は多いものです。自責という観点から、感情労働によるストレスマネジメントとしてセルフ・コンパッションが有効と言われています。コンパッションという言葉は聞き慣れないかもしれませんが、慈悲を意味します。つまりセルフ・コンパッションとは自分を慈しむこと、自分に優しくしてあげることです。例えば、自分の大切な友人が悩んでいたら、思いやりをもって慰めようとすると思います。見返りや打算などなく、ただ苦しみから助けてあげたいと思う。これが慈悲の優しさです。

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セルフ・コンパッションについて

セルフ・コンパッションでは、生徒や後輩・患者さんと同じように自分もひとりの人間として接することが大切です。「休日くらい部屋を掃除しないといけないのにできなかった…」「ついダラダラ過ごしてしまった…」「研修会の資料を確認しないといけないのにできていない…」色々と自分のできていないことが目に付くこともあると思います。でも、一人の人間にできることは限界があるので、当然できないこともあると思います。たぶん、患者さんが同じようなことを言っていたら、責めたりせず、そんなふうに慰めますよね。それを自分にもしてあげましょう。

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考えることが苦手な方へ

考えることが苦手な方は、目に見える形で自分を労うというのも良いかもしれません。好きなものを食べながら、「私が穏やかでいられますように」「これからも私が幸せでありますように」などと言葉に出してください。この言葉はセルフ・コンパッションを高める方法のひとつ、慈悲の瞑想に出てくるフレーズです。本来は瞑想で使うものです。でも、心理学では予言の自己成就効果といって、言葉に出すことでそのように行動したり考えたりするようになるという現象があります。そのため、フレーズを言葉に出すこともセルフ・コンパッションを高めてストレスを低減させるうえで有効だと考えられます。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など