皮膚むしり症の特徴・治療について
皮膚むしり症はこれまで抜毛症や抜毛癖、皮膚むしり症候群、衝動制御障害として扱われていましたが、DSM-5では「皮膚むしり症」として独立した診断基準が設けられました。従来は、皮膚むしり症候群・心因性剥脱・神経性人工的擦過傷・表皮剥脱症・副次的人工的擦過傷などの名称がありました。
皮膚むしり症に関する診断基準はこちらのブログをご参照ください。
ここでは、皮膚むしり症に関する特徴について解説を行っております。
皮膚むしり症の割合や年齢について
皮膚むしり症の生涯有病率1~5%であると言われております。しかし、多くは青年期や成人期初期に発症することや、30~45歳の間に発症することも多いとされており、このように比較的年代に偏りがあるために、ある人にとっては「皮膚むしり症って意外と身近に多いな」と感じられることも多いのかもしれません。
皮膚むしり症の性別について
皮膚むしり症は、圧倒的に女性の方が多く、女性が75%を超えるとも考えられております。
また、皮膚むしり症の程度は常に一定ではありません。特に女性の皮膚むしり症の50%程度の方が月経に関連して皮膚むしり症状が変化するとも言われています。
皮膚むしり症の原因について
皮膚むしり症の原因ははっきりとは分かっていません。
しかし、抑圧された感情や怒り、更には自己主張やストレス発散の為が、最初のきっかけとなり、皮膚むしり症に転じる方も見えます。
皮膚むしり症のきっかけとなる皮膚症状とは
皮膚むしり症のきかっけに繋がる皮膚症状は、ニキビが多数であると言われています。にきびを触ったり潰したり、更にはかさぶたや突起をつまみとるなどをきっかけとして、皮膚むしり症状に繋がることが、皮膚症状として最も多いと言われています。
そのため、皮膚むしり症を繰り返すためにその部分が刺激になってにきびを更に誘発するなどといったサイクルを呈してしまう事もあります。このようなニキビの経過は、皮膚むしり症の診断基準Dにある、他の医学的な疾患とは区別されることが多いです。
皮膚むしり症で”よくある身体的な場所”とは
皮膚むしり症の良く起きやすい場所は、顔が多いです。その他に手や腕、爪の甘皮、指、足、体幹、頭皮等様々です。
顔のニキビなどを触れたり潰しているうちに、皮膚むしり症に転じてしまう事もあるのです。
皮膚むしり症が、止めたくても止められないのはなぜ?
大きく分けると…
・皮膚むしりの最中は無意識であることもあり、知らないうちにむしってしまっている事もあり止められない
・皮膚むしりをする直前の緊張感や皮膚むしりを行った時の満足感や安心感が得られるからやめられない
・身体感覚や衝動や不快感を和らげるために皮膚むしりを行うために、止められない
などの、サイクルの為に繰り返してしまう事が多いと言われていますが、もちろん上記の理由以外に繰り返してしまう方も多いので注意が必要です。
皮膚むしり行為が終えると、恥ずかしさや嫌悪感が押し寄せてくることも
また、皮膚むしりの結果として得られた安堵感や満足感はすぐに、後悔や嫌悪感、更には恥ずかしさなどの感情に変わってしまう事も多く、包帯や手袋などで隠してしまったり、人の目に触れないような行動を選択したりなどの行動変容を起こしてしまう事も多いのです。
皮膚むしり症の治療について
皮膚むしり症の患者様は、多くの場合は症状に対して病識があっても、恥ずかしいと感じたり、誰にも知られないように行動をすることも多く、また皮膚むしりを行っていない間は健康度が高いと感じられるために、医療の受診や相談に非常に消極的である事も特徴です。
また、皮膚むしり症の行為の減少に対して、抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が有効であると言われていますが、皮膚むしり症そのものに対する治療としてのデータはまだまだ十分な検討がなされているとは言えません。
特に皮膚むしり症は身体面と精神面が組み合わされて生じてしまう症状のために、その悪循環を断ち切るためにも、内服薬などだけではなく、外来での精神療法の継続や、皮膚の物理保護などといった身体面への働きかけも組み合わせて行う事が大切であると考えられます。
抜毛や皮膚むしり、爪かみなどの行動も含めて、身体集中反復行動と呼ばれます。
➡【爪かみ・唇かみ・皮膚むしり】などの身体集中反復行動症とは
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など