毎日の食べ物を見直して、気分変調症を改善させよう
気分変調症と食べ物について
気分が落ち込むと食欲がなくなったり、料理するのが億劫になるため、食べ物が適当になってしまう人は少なくないと思います。しかし、食事は私たちのメンタルを整えるのに大事なものです。食生活を改善することで、抑うつの程度が改善したという研究結果もあるほどです。
この記事では、気分変調症で悩んでいる人にとってほしい食べ物やについてお話をします。
【抑うつ気分の変化について】食生活を3週間ほど見直すことの大切さ
オーストラリアMacquarie大学のFrancis氏が2019年に発表した論文によると、3週間食生活を改善することで抑うつ気分が改善されるということが分かりました。Francis氏の実験では食生活を改善するか、それともこれまでと同じ食生活をするかによって、抑うつ的な大学生にその後変化が見られるか検討されました。食生活を改善する群では、具体的には以下の食生活を行うようにしたのです。
・摂取を推奨した食べ物
野菜:1日に5皿
果物:1日に2、3皿
全粒粉物:1日に3皿
たんぱく質(赤身の肉、鶏肉、卵、豆腐、大豆など):1日に3皿
砂糖を加えていない乳製品:1日に3皿
魚:1週間に3皿
ナッツ:1日にテーブルスプーン3杯
オリーブオイル:1日にテーブルスプーン2杯
スパイス(シナモンやターメリック):ほぼ毎日ティースプーン1杯
・摂取量を減らすのを推奨された食べ物
脂質
砂糖
精製炭水化物(ラーメン、パスタ、うどん、パン、白米など)
加工肉
ジュース
上記のような質の高い食生活を行った場合、3週間後の抑うつの程度が下がっただけではなく、それから3ヶ月後も抑うつの程度が変わらず下がったままでした。食生活が体だけではなく心の調子を整えるうえでいかに大事かがよく分かるものです。
心の調子を整えるうえで大切な栄養とは
幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」が少なくなる・あるいはバランスが変化するために、気分変調症などのうつ病は発症しやすいと考えられています。
セロトニンを作る原料となるのが、トリプトファンです。トリプトファンは食事でしか摂取できない必須アミノ酸です。牛乳やヨーグルトなどの乳製品や肉・魚、大豆製品、ナッツ類などのタンパク質に多く含まれています。
ただ、トリプトファンを摂取するのはもちろん大事なことですが、前提として腸内細菌バランスよく存在しないと、脳のなかのセロトニンは増えません。それというのも、腸内細菌がセロトニンの前駆物質を脳に送っているからです。腸内細菌のバランスを整えるには、ヨーグルトのほか、発酵食品の味噌やキムチ、チーズなどを摂取するとよいでしょう。
他にも、セロトニンの合成には以下のビタミン類が関わってきます。
・ビタミンB3(ナイアシン):カツオ、サバ、ブリ、レバー、乾燥キノコなど
・ビタミンB6:マグロなどの赤身の魚、ささみやヒレ肉などの脂肪の少ない肉、バナナ、パプリカ、さつまいも、玄米など。
・葉酸:ほうれん草、アスパラガス、春菊、納豆、いちご、レバーなど
ここに挙げた複数の食べ物を組み合わせると、効率よく大切な栄養が取れます。特に、バナナヨーグルトはトリプトファン、腸内細菌のバランス、ビタミンB6と様々な栄養が一度にたくさん摂取できます。食欲がなくても食べやすいですし、安価に作れるため、牛乳アレルギーがない人にはおすすめの食べ物です。
チョコレートには注意が必要
GABAという栄養にはリラックス効果があります。ストレスを多く抱えているときなどは、GABAを多く含んだチョコレート商品を手に取ったことのある人も多いのではないでしょうか。GABAは抗うつ薬に含まれることもあるものですので、落ち込んだときにはチョコレートを食べたほうがいいというのは間違ってはいません。
しかし、問題はその量です。アメリカの研究によると、うつ病傾向のある人はそうではない人と比べて2倍以上もチョコレートを食べていることが分かっています。これだけ食べると、抑うつ気分が改善される効果よりも太ってしまう心配が出てきます。チョコレートを食べるのもいいですが、食べる量には注意するようにしましょう。
まとめ
食生活は体の健康だけではなく心の健康も整えてくれます。気分変調症のように抑うつ気分がずっと続くと食欲もなくなるため、つい手軽な食事で済ませようとしてしまうかもしれません。しかし、それは抑うつ症状を助長させる恐れがあります。Francis氏が行った実験のような質の高い食事は難しくても、セロトニンがたくさん分泌されやすくなるバナナヨーグルトなどを積極的に食べることをおすすめします。
とはいえ、食事でできることには限度があります。あまりにもしんどい気分がずっと続くようなら、それは薬でしか改善できないかもしれません。食事を改善してもしんどい気分が続く場合、あるいは食事を改善する気力すら湧かない場合は、心療内科・精神科・メンタルクリニックに相談しましょう。
文献
Francis, H. M., Stevenson, R. J., Chambers, J. R., Gupta, D., Newey, B., & Lim, C. K. (2019). A brief diet intervention can reduce symptoms of depression in young adults – A randomised controlled trial. PLoS One. 14(10):e0222768.
藤田紘一郎 (2012). こころとからだの免疫学―腸内細菌の働きを中心に― 心身健康科学, 8, 5-9.