会食恐怖症について
会食恐怖症について
会食恐怖と聞くとどのようなイメージがあるでしょうか?
会食恐怖では誰かと一緒に食事をする際に自分が食べているところを相手から見られることで、強い緊張を感じて自然に食事をすることが難しくなってしまいます。
●「口に入れた食べ物を自然に飲み込むことができない」
●「焦りや動揺から食器を持つ手がひどく震える」
●「吐き気など身体の不調を感じる」
などの問題が生じるだけでも辛いことです。会食恐怖では、このような状態の中でさらに「相手から変に思われないだろうか」などと相手からの評価を過度に心配して余計に緊張が強まるという悪循環に陥ってしまいます。
こうした苦悩の経験の結果、次第に会食場面を避けるようになって友人や恋人、職場の対人関係に悪影響を及ぼすこともあります。適切な対応が遅れると、会食恐怖によって自分の夢や仕事を諦めなければならない事態にまで発展することもあります。
会食恐怖症は社交不安症(SAD)に分類される
会食恐怖は精神医学では社交不安症に分類されます。社交不安では、他者から否定的な評価を受ける、相手から嫌われる、恥ずかしい思いをすることをひどく恐れて人から自分が判断される場面を避けようとします。あるいは、こうした自分が恐れる事態になることを避けるために過剰な努力をすることもあります。
会食に伴う不調を避けるための過剰な努力が余計に症状を顕在化させてしまうことも
皮肉なことに、この過剰な努力が社交場面での不安を強めていることが多くあります。例えば、会食場面で相手からおかしいと思われないように自分の動作に意識的に注意を向けコントロールしようとする結果、かえって言動が不自然になって緊張や不安が高まるといったものです。
背景には、自信のなさや否定的評価に対する過敏性が挙げられる
こうした社交不安の背景には、自分自身を否定的に評価することや他者から否定的評価を受けることで相手から嫌われるなど自分にとって大きな損失に繋がると捉える傾向が強いと指摘されています。
社交不安症や会食恐怖症は、治療や相談へ至るまでに時間がかかる傾向も
さらに社交不安症では問題の発生から治療や相談に至るまでに時間がかかる傾向があり、問題が深刻化しやすいとの指摘もあります。ある調査では、社交不安症の発生が多くなるのは進学や就職など社会活動が本格化する10代後半の時期と言われていますが、本人が医療機関に受診や相談に訪れるのは30代が最も多いと報告されています。これは問題が深刻になり、生活に大きな支障をきたすようになってはじめて受診や相談に至るケースが多いことを表しています。
【会食恐怖症】自分に対しても『否定的な考え』が浮かんでしまうことも
社交不安症の一つである会食恐怖にも同じことが言えますが、問題が深刻になってからの治療や相談では、その改善や解決までにかかる時間や労力が大きくなってしまいます。
早い段階で治療や相談を始めることができれば、問題解決までの多くの負担を小さなもので済ますことができます。しかし、実際は、「こういう性格だから...」「こんなことくらいで...」と、辛い状況にあるにもかかわらず、自分一人で問題を抱え込んでしまう人が多いのも現状です。
さらに、問題が深刻になっても、「このようなことを相談する自分を相手はどのように思うだろうか」と心配して相談することをためらうこともあります。会食恐怖など社交不安症で悩まれる方にとって、そのことを相談するのは特に勇気がいることです。しかし、相談することで問題を解決し、自分らしく他者と一緒に社会生活を楽しめるようになった方もおられます。
会食恐怖症の治療について
会食恐怖症の治療は、社交不安症の治療に準じた、SSRIなどの抗うつ薬を主体とした薬物療法だけではなく、行動やものの見方である認知面についての取り組みがあります。
また、会食恐怖に関連して、人と交流することに対する過敏性も高まり、仕事や学校などの社会生活に影響を及ぼしていることも多くありますので、社会福祉的な支援と援助といった、お一人お一人に応じたトータルサポートは大変重要です。
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