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2023.03.252023.04.26

持続性抑うつ障害(気分変調症)~概要・診断基準~

持続性抑うつ障害(気分変調症)~概要・診断基準~について

DSM5に改定されるにあたり変更された点がいくつかありますが、持続性抑うつ障害(気分変調症)もそのひとつです。
DSM5における持続性抑うつ障害(気分変調症)の概要や診断基準について、この記事では説明します。

持続性抑うつ障害(気分変調症)の概要

DSM4-TRでは気分変調性障害と呼ばれる疾患がありました。気分変調性障害とは、2年以上もの長期間に渡って抑うつ気分が慢性的に続くという精神疾患です。症状が見られる期間こそ長いものの、うつ病と比べると気分変調性障害による気分の落ち込みは軽度であると見なされていました。

DSM5では、この気分変調性障害と慢性の大うつ病性障害が統合され、持続性抑うつ障害(気分変調症)とされました。2年間以上続いている抑うつ気分が、この疾患の基本的特徴です。そのため、抑うつ気分の重症度は関係ありません。

持続性抑うつ障害は小児期や青年期、成人早期に発症することが多いです。特に子どもの頃から症状が出ている場合、抑うつ気分や自己評価の低さなどは患者さんにとって当たり前のものとなりがちです。「私はいつもこうだよ」と患者さんが言っても、面接者ははっきりと尋ねて症状を正確に把握する必要があります。

持続性抑うつ障害(気分変調症)の診断基準

診断基準は以下の通りです。

A ほぼ終日に渡って抑うつ気分が見られる

また、その抑うつ気分は2年以上もの間見られる日のほうが見られない日より多い

※抑うつ気分は患者さんによる説明(例 悲しい気分、落ち込んだ感じなど)あるいは他者の観察によって示される

※患者さんが子どもや青年である場合、抑うつ気分ではなく怒りっぽさが示されることもある。また診断を下すのに必要な期間は2年間以上ではなく1年間以上となる

B 以下の6つの症状のうち2つ以上が、抑うつ気分が生じている期間に存在する

(1)食欲減退あるいは食欲増加

(2)睡眠障害(不眠あるいは過眠)

(3)疲労感がある、やる気を持てない

(4)自尊心の低下

(5)集中力が減っている、なかなか決断できない

(6)絶望感

※うつ病の抑うつエピソードと異なり、以下の4つの症状は持続性抑うつ障害の診断基準には含まれない

・興味や喜びの喪失

・精神運動制止または精神運動焦燥

・自己の無価値感や過剰な罪責感

・死についての反復思考や自殺念慮

C 抑うつ気分が生じている2年間において、基準AとBの症状が2か月以上存在しなかったことはない

※子どもや青年については「抑うつ気分が生じている2年間」ではなく「抑うつ気分や怒りっぽさが生じている1年間」となります

D 抑うつ気分が生じている2年間において、うつ病の診断基準を持続的に満たしている可能性がある

E 躁病または軽躁病エピソードは一度も存在しない

また、気分循環性障害(2年間以上もの間、軽躁病エピソードの診断基準を満たさない程度の軽躁状態の期間と、抑うつエピソードの診断基準を満たさない程度の抑うつ状態の期間が何度も繰り返される気分の障害)の診断基準を満たしたこともない

F 症状は他の精神疾患ではうまく説明できない

(例)持続性の統合失調感情障害、統合失調症、妄想性障害、他の特定される、または特定不能の統合失調症スペクトラム障害、他の精神病性障害群

※鑑別基準については後編の記事で解説します

G 症状は物質の生理学的作用や他の身体疾患によるものではない

H その症状は、臨床的に意味のある苦痛や、勉学や仕事、家事などの大切な領域における機能障害をもたらしている

コード記載

うつ病と同様に、持続性抑うつ障害の診断でも特定用語を記載します。「不安性の苦痛を伴う」、「混合性の特徴を伴う」などの抑うつ症候群の特定用語や、寛解状態や重症度などの特定用語だけではなく、持続性抑うつ障害にだけ使われる特定用語もあります。

この記事では、持続性抑うつ障害にだけ使われる以下の2つの特定用語の説明をします。それ以外の特定用語については、今後の「抑うつ障害群の特定用語」の記事を参照してください。

①発症年齢<該当すれば特定せよ>

・早発性:21歳以下で発症した場合

・晩発性:21歳以上で発症した場合

②持続性抑うつ障害を発症してからの直近2年間に抑うつエピソードの基準を満たしていたか<該当すれば特定せよ>

・純型気分変調症候群を伴う:

直近2年間に抑うつエピソードの基準を完全には満たしていない

・持続性抑うつエピソードを伴う:直近2年間に抑うつエピソードの基準を完全に満たしている

・間欠性抑うつエピソードを伴う、現在エピソードあり:現在は抑うつエピソードの基準を完全に満たしている

かつ、直近の2年以上もの間、少なくとも8週間は抑うつエピソードの基準を完全には満たしていないときがあった

・間欠性抑うつエピソードを伴う、現在エピソードなし:現在は抑うつエピソードの基準を完全には満たしていない

ただし、直近の2年以上もの間、少なくとも1回は抑うつエピソードが見られた

間欠性抑うつエピソードのように、持続性抑うつ障害の一部の期間で抑うつエピソードが認められることもあります。

持続性抑うつ障害(気分変調症)が引き起こす問題

持続性抑うつ障害もうつ病と同様に、勉学や仕事、家事、対人関係などの大切な領域に様々な悪影響を及ぼします。その影響力はうつ病と同じか、それ以上であると考えられています。

後半の続きはこちらです

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など