仮病や甘えと誤解されやすい非定型うつ病。20~30代の若い女性は特に注意!
仮病や甘えと誤解されやすい非定型うつ病。20~30代の若い女性は特に注意!
上司から叱られてから会社に行くのがとてもしんどくなった…。でも、前から彼氏から誘われていたし、気分転換にディズニーランドに行ったらとても楽しかった。ついSNSにアップしてしまったら、それに気づいた同僚からは仮病と言われ、会社にますます生きにくい…。これにはもしかしたら、非定型うつ病が関係しているのかもしれません。この記事では、うつ病の一種である、非定型うつ病についてお話します。
非定型うつ病って何?
うつ病というと、ずっと暗い気分が続く病気というイメージを持っている人が多いと思います。うつ病の中核的な症状は気分が非常に落ち込んでいることなので、そのイメージは間違っていません。しかし、会社ではうつ病っぽいけど、元気に遊びに行けている会社員がたくさんいることが2010年前後から注目されてきました。
気分の落ち込みという点ではうつ病だけど、でもちょっと違う…。そのような病気が非定型うつ病と呼ばれます。
うつ病の生涯有病率(一生のうちにその病気に一度はかかる確率)は6.5%であり、決して少なくはありません。実はうつ病の内、30~40%は非定型うつ病であると言われています。非定型うつ病は特に20~30代の若い女性に多いことが分かっています。
非定型うつ病の症状
非定型うつ病には以下の症状があります。
・気分が落ち込んでいることが多いけど、好きなことをすると、その間は明るくなれる
・食べ物、特に甘いものを食べすぎてしまい、太ってしまう
・いくら寝ても、眠りたりない
・鉛のように手足が重く感じられる
・特に夕方ぐらいから調子が悪くなる
・他人からの評価がとても気になる。ちょっと発言でも見下されたように感じられてつらい
・例えば上司からの叱責がストレスとなった場合、上司の顔を見るとその時の嫌なことが思い出されてしんどいなど、フラッシュバックが起こる
普通のうつ病と違って「好きなことは楽しそうにしている」、「しっかり食事できている」から、非定型うつ病にかかった人は健康であると誤解されやすいです。しかし、本人にしか分からない悩みが実はあります。
例えば、いくら好きなことは楽しめるからといって、そればかりしているわけにはいきません。ストレスがある状況ではきついという点ではうつ病と変わりません。また、若い女性にとって食べ過ぎて太ってしまうことは自己嫌悪感を強めてしまうでしょう。
そのため、非定型うつ病も決して軽んじていいものではありません。
非定型うつ病になる背景
非定型うつ病になる背景として、脳の前頭葉という部分の機能低下があります。
前頭葉には感情をコントロールしたり、海馬という脳の記憶をつかさどる部分をコントロールする役割があります。前頭葉の働きが悪くなることで、感情がコントロールできなくなり、ささいな言葉ですらもきつく感じられたり、その言葉を何度も思い出してしまうようになるのです。
また、前頭葉の機能が低下すると、眠気や疲労感、だるさといった症状も出てきます。
非定型うつ病の治療方法
精神疾患の治療というと薬物療法がイメージされやすいと思います。でも、実は新型うつ病では投薬は効きにくいという報告もあります。そのため、投薬と共に、セルフケアおよび、社会福祉サービスの利用に伴う環境訓練や調整がとても大切なのです。
(1)生活面の見直しやストレスを減らす
非定型うつ病の代表的な症状に「人からの評価がとても気になる」とあるように、非定型うつ病になりやすい人はささいな言葉であってもきつく感じやすいです。時には相手の立場になったつもりでロールプレイを行うことによって、言葉の捉え方を変えることができます。
例えば、同じ非定型うつ病の患者同士で上司役・部下役を演じることで、上司の立場を理解し、“なぜキツイ言葉を言われたのか“や、その言葉の真意、それは本当にキツイ言葉だったのかなどを捉えなおすことができます。
(2)セルフケア
非定型うつ病を改善していくにはセルフケアも欠かせません。
1)適切な睡眠をとる
脳の前頭葉の機能低下のため眠たいという症状が出ているとはいえ、眠りすぎは睡眠の質を低くしてしまいます。そのため、規則正しい睡眠時間にする必要があります。
睡眠の質を高めるためには就寝時間も大切です。
午後10時~午前2時が睡眠のゴールデンタイムと言われるように、午後10時にはベッドに入りましょう。
2)ストレスへの対処行動のレパートリーを増やす
非定型うつ病になりやすいのが20~30代である理由の1つに、ストレスへの対処行動の少なさや、ストレスを抱え込んでしまうがあります。そのため、適切にストレスに対処できるよう、ストレスに対処するレパートリーを増やすことが大切です。
例えば、自分が上司だったら…と相手の立場をイメージするといいかもしれません。他にも、運動・スポーツや歌ったりすることでストレスを発散させることも大切です。
まとめ
仮病と誤解されることもありますが、非定型うつ病も病気の1つです。一人で抱え込まず、心療内科やメンタルクリニック、精神科などできちんとケアしましょう。
野村紀夫 監修
ひだまりこころクリニック 院長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など