クリニックブログ

2019.12.032023.06.17

「かくれ躁うつ病」なかなかうつ病が治らない時は

なかなか治らない”うつ病”、じつは「かくれ躁うつ病」かもしれません

-躁うつ病の正しい理解-

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うつ病・躁うつ病の分類の違いについて

米国精神医学会が制定している診断基準DSM-Ⅴが発表されて以降、DSM-Ⅳに存在していた(うつ病、躁病、躁うつ病)を総称した「気分障害」という名称はなくなり、「双極性障害および関連障害群」、「抑うつ障害群」に分けられることになりました。

WHO(世界保健機関)の国際疾病分類第10版ICD-10では、気分障害は「気分(感情)障害」と呼ばれています。

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大まかに説明すると、その気分(感情)障害のうち、うつの病相だけがあらわれるものを、「うつ病エピソード」、うつ病の再発をくりかえすと「反復性うつ病性障害」、その対極である躁の病相のみがあらわれるものを「躁病エピソード」と呼びます。そして、躁とうつをくりかえす躁うつ病を「双極性(感情)障害」と呼びます。

ここで重要なことは、うつのみあらわれる単極性のうつ病と、うつと躁があらわれる双極性の躁うつ病は、DSM-Ⅴでも別のカテゴリーに分類されているように、病前性格からみても、両者はまったく異なる病気であるということです。

うつ病と躁うつ病の病前性格の違いとは

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病前性格の違いとは、うつ病の患者さんは「意志が強く、責任感があり、ついがんばりすぎてしまうため、その徒労感からうつ病を発症する」のに対し、躁うつ病の患者さんは「もともと気分屋で気分の波が激しいとされており、特定の制約や目標設定を受けて仕事をさせられると、さらに気分の波が大きくなり、生活に支障が出るほど苦しくなり、発病する」傾向があるということが指摘されています。

うつ病から躁うつ病への極性診断変更と、躁うつ病の範囲の広がり

アキスカルは多くの潜在的なうつ病がもれ落ちてしまう事に対して懸念し、はっきりとした躁病エピソードまでには至らない「軽微な躁」も、積極的に「躁うつ病」を疑うべきであると指摘し、躁うつ病を双極Ⅰ型からⅣ型まで6つに分類しました。6つの病相を簡単にまとめると、次のようになります。

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①双極Ⅰ型:従来の典型的な躁病相のはっきりした躁うつ病

②双極Ⅱ型:軽躁病を伴う“明るい”うつ病

③双極Ⅱ1/2型:気分循環気質の“より暗い”うつ病

④双極Ⅲ型:抗うつ剤治療によってのみ軽躁するうつ病

⑤双極Ⅲ1/2型:アルコールや薬物乱用によって躁転するうつ病

⑥双極Ⅳ型:発揚気質のうつ病

軽微な双極性障害でうつ状態を呈していても、躁うつ病として気分安定剤を中心に治療しながら、治療経過を見た方が有益だと考えられています。

軽微な躁症状ほど見逃したり、経過を追わないとうつ病などの他の病気と間違いやすい

躁うつ病にあらわれる軽微な躁の症状は、診断が困難です。患者さん本人によっては違和感がなく、軽微な躁の状態を、”むしろ調子が良い””、”普段通り”と感じる場合がほとんどだからです。

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しかしながら、病前性格や、家族歴、躁転(うつから躁に状態がかわること)の既往が確認されれば、躁うつ病を積極的に疑っていいと思います。また、うつ病の経過としては不自然だと思われる場合には再度躁うつ病の可能性についてしっかりと考慮するべきであると考えられます。

治療経過中に、症状に応じて「躁うつ病」と発覚することもあると考えられています

実際に、単極のうつ病から双極の躁うつ病への極性診断変更は、決してまれではありません。単極性うつ病の患者さんのうち2~3割以上が、数年にわたる経過観察中に、双極Ⅰ型あるいはⅡ型に移行しているという報告もあるのです。

つまり、はじめはうつ病に見えたのに、治療中に躁うつ病だったとわかるケースが、意外にたくさんあるということです。

うつ病エピソードで発病すれば、最初はうつ病と診断され、うつ病が再発すれば反復性うつ病に診断が変わり、躁や軽躁のエピソードが出現すると遡及的(そきゅうてき)に診断が変わって、躁うつ病と診断された報告も数々あります。

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軽微な躁状態は、本人ではなく医師でないと分からないことも

しかしながら、軽い躁状態は患者さん自身も周囲の人も、病的な躁の時期だと自覚してしない場合が多く、依存や浪費・借金などの逸脱(いつだつ)行為や、よほど顕著になった躁状態でない限り、誰も気がつかないことも多いのです。

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また軽微な躁状態では、”調子が良い状態”、”普段の体調が良い時”といった認識で本人も考えていることも多いために、医師との診察の経過を経て、「軽微な躁状態」と通院期間を重ねながら、医師の診察を通して判断されることもあるという事なのです。

躁うつ病の躁状態には、さまざまな合併症がみられます

DSM-Ⅳの発表以来、躁うつ病の診断にさまざまな合併症が容認されるようになりました。

アキスカルが提唱する「双極スペクトラム」では、躁うつ病には、抗うつ薬による躁転だけでなく、薬物やアルコールの依存関連障害や、それに伴う躁転、ギャンブルなどの衝動制御の障害、過食や拒食などの摂食障害、パニック障害不安障害不安神経症、リストカットなどのパーソナリティ障害のような症状など、多彩な症状が共存することが示されています。

さらに、躁状態とうつ状態の両方の特徴を満たす「混合状態」のときの不安焦燥感、不眠、摂食障害、自殺念慮、自殺企図や不機嫌な躁状態なども、極性診断変更時には重要な手がかりとなります。また、躁うつ病では過眠になり、夜中に活動する昼夜逆転が出現することもあります。

極論をいえば、うつ状態で発症した患者さんが、治療中に先述したような症状がみられた場合、単極性うつ病以外の病気、すなわち躁うつ病を疑うべきだと思います。

その一方で、パニック障害や不安障害、焦燥感、自殺念慮などは、単極性のうつ病でも見られることがあるため、十分な注意が必要です。

これらの症状がうつ病からくるものなのか、躁うつ病からくるものなのかをご自身で見分けるのは、実は大変難しいです。そのために、医療機関などできちんとご相談をされることをおすすめいたします。

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躁うつ病とうつ病では治療薬も異なります

うつ病の治療については、SSRIなどの抗うつ薬が主体となりますが、躁うつ病では気分安定薬を主体とした治療となります。

そして躁状態の患者さんは、必ずしも調子が良くハッピーな状態というだけではなく、イライラした不機嫌な高揚感も伴います。程度の差が激しいときは、医師や周囲の人も「あれ、ちょっとおかしいな・・・・」と気づくことができますが、これらの症状が軽微なときは、患者さんも医師も躁状態と見抜けないため、反復性うつ病などの診断のまま、うつ病治療を続けることになってしまうのです。

「かくれ躁うつ病」とは

このように、軽微な躁がはっきりしなかったり、見抜くことができず、うつ病として診断がついていたり、うつ病の治療を続けている躁うつ病のことを、「かくれ躁うつ病」と呼びたいと思います。

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「かくれ躁うつ病」を見つける手がかりとは

「自分がうつ病である」自己診断された人のうち、以下のいくつかが当てはまるようなら、「かくれ躁うつ病」の可能性があります。

つまり、うつ症状で初発し、うつ病らしいと診断された患者さんで、以下に示したような症状が見られ、うつ病の治療への反応性が不良などの経過の不一致がある場合、実は躁うつ病であるという可能性も念頭に置くべきです。その場合、積極的に極性診断変更をおこない、服用する薬も再考慮が望まれます。

少なくとも単極のうつ病の患者さんが、治療中にギャンブルにのめりこみ、多額の借金を作ってしまったり、急に思いついて途方もない高額な品物買ったりすることはあまりないと言われております。

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躁うつ病を念頭に置くべき症状や経緯

【気分屋的気質】

生まれつき型にはめられることを嫌う→本人も自覚していることが多い

熱しやすく冷めやすい→ひとつの物事を最後まで遂行することが苦手

【家族歴】両親、祖父母、叔父叔母、従兄弟に、アルコール、薬物依存、自殺者、うつ病らしき人、躁うつ病などを疑わせるなにかしらの病気を患った人がいる

【軽微躁(気分の波)】本人には自覚症状がなく、むしろ調子が良くなったと思いがちで、家族も病的だとは気づきにくい→長期診察中に医師が気づくことがある

【不機嫌な高揚感】些細なことで爆発する(きれる)、イライラする、攻撃的になる、短絡的ですぐ投げやりになる物質関連障害、アルコールや麻薬などの薬物依存・乱用など(抗不安薬を持っていないと不安になる、なども含む)

【衝動制御の障害】借金をしてまでパチンコ、競馬など病的に賭博にのめりこむ、性行為や買い物の衝動が抑えられない(病的な恋愛依存、スポーツジム、インターネット、カルト宗教、ダイエットなども含む)→家族には借金を隠している場合が多く、問診で発覚する場合が多々ある

【混合状態】躁とうつが混じっている状態→不安焦燥感が強い、睡眠障害、摂食障害、情緒不安定、自殺念慮・企図など

【境界性パーソナリティ障害】リストカットなど自傷行為のくりかえし、抗不安薬に依存したり乱用したりがある

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初回の診察だけではなかなか見抜けない、通院の経過を経て分かることが多い「かくれ躁うつ病」

これまでに述べた、躁うつ病の双極Ⅱ型の症状は、外来の初診の面接や診察だけでは、見落としやすいものです(双極Ⅰ型は躁病相がはっきりしているため、誤診は少ないです)。むしろ、これまでのDSM-ⅣやICD-10などのガイドラインによる診断名の分類こそが、双極Ⅱ型のうつ状態を単極性うつ病と見間違える、大きな原因のひとつでもあるかもしれません。

なぜなら「躁状態」は「うつ状態」と比べて患者の自覚も乏しいことが多いために、初回の診察だけではなく、何回も通院を経たり治療の経過に応じて、軽微な躁状態の存在がはっきりしてくることも多いからです。

実は「躁うつ病」の初めは”うつ状態”が強く、うつ状態を悩み医療機関へ受診することも多いのです

躁うつ病が発病すると、はじめはうつ状態が強く出ます

辛いうつ症状が継続している場合には心療内科で相談を

「毎日抑うつ気分がひどい」あるいは「なにをしても楽しいと思うことがない」という主症状に、「夜もよく眠れない」、「食欲がない」、「体がだるい」、「集中力がなくなって、前なら数分でできたことが、今は1時間以上かかる」と訴えて、初めて心療内科やメンタルクリニックを受診されることが、躁うつ病の方にも多いのです。

初回受診時の診断基準から照らし合わせて、「うつ病」と診断・治療を開始しながらも、医師はその後の経過を注意深く診ながら、常に躁状態の存在については考慮しているのです。

心療内科は通院を経ながら治療経過を診てもらうことが大切なのです

治療の経過や症状の経過に不一致な点がないかどうか、医師は患者との診察を経ながら判断をしていきます。

かくれ躁うつ病の存在についてしっかりと把握するためにも、通院中の症状や経過について、医師に報告をしたり相談をするようにしましょう

もし、都合で予約日に心療内科やメンタルクリニックなどの医療機関に受診できなかったとしても、ご自身の体調の為にも早めの診察の調整を心がけましょう

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〇こちらもご参照ください

→うつ病の詳しい説明はこちらから

→躁うつ病(双極性障害)の詳しい説明はこちらから

→「躁うつ病はうつ病よりも遺伝しやすい」記事はこちらから

→「躁うつ病」に関する心療内科ブログはこちらから

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野村紀夫 監修

ひだまりこころクリニック 院長 / 名古屋大学医学部卒業

保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など

所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など