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2020.01.142024.04.01

セントジョーンズワートなどの民間療法や食事療法、サプリメントの注意点とは

セントジョーンズワートなどの民間療法や食事療法、サプリメントの注意点について

うつ病で悩んでいる患者さんは、何とか楽になりたいと藁をもつかみたい想いでいる方も多いと思います。とはいえ、精神科や心療内科などの病院を受診することは敷居が高いものです。そのため、ハーブを使った民間療法や食事療法、サプリメントなどを試してみる患者さんも少なくはないと思われます。しかし、ハーブやサプリメントのなかには他の薬剤との相互作用で重大な問題をもたらすものがあるため、注意しなければなりません。

他の薬剤との相互作用で重大な問題をもたらすハーブとして、この記事ではセントジョーンズワートを取り上げて解説します。

セントジョーンズワートとは

セントジョーンズワート(SJW)とは、日本ではセイヨウオトギリソウあるいは弟切草とも呼ばれまるハーブです。夏になると、レモンに似た香りのする小さい黄色の花を咲かせます。

その作用メカニズムは完全に説明されているわけではありませんが、セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害すること、セロトニン受容体をアップレギュレートすること、セロトニン受容体の発現を抑制することなどの働きがあるのではないかと考えられています。そのため、不安や緊張を抑えることができるので、葉っぱはハーブティーやオイルなどに利用されています。栽培することもできますし、サプリメントも販売されているため、「セントジョーンズワート」という言葉を目にしたことがある方もいるかもしれません。

セントジョーンズワート・SJWは、ヨーロッパでは伝統的な薬草として使用・登録されています。特に、ドイツではうつ病の治療薬として認められています。しかし、SJWが許可されているのは、ヨーロッパの多くではこれまで伝統的に使われてきたという歴史があるためです。効果や忍容性については薬剤のようにエビデンスにより強く支持されているというわけではない点には、注意しなければなりません。

心療内科 ひだまりこころクリニック栄院がセントジョンズワートに関して解説しています

うつ病にセントジョーンズワートが及ぼす効果

うつ病治療にセントジョーンズワート(SJW)が有効であるというエビデンスはいくつかあります。コクラン・レビューを含めたいくつかの研究で、軽度~中等度のうつ病治療に対してSJWは抗うつ薬と同じように有効であり、かつ抗うつ薬よりも忍容性に優れていることが報告されています。とはいえ、SJWが治療薬として認められているドイツ語圏の地域では他の地域よりも肯定的な結果が多く出ているという点は気になるところです。また、SSRIの投与が不十分であった、自分は実薬条件に割り付けられていたという患者さんの思い込みなどの研究上の限界があることも指摘されています。

いずれにせよ、セントジョーンズワート(SJW)のどの成分がうつ病治療に有効なのか明らかにされていないこと、うつ病治療におけるSJWの効果は軽度~中等度の急性期治療しかエビデンスがないなどの問題があります。そのため、SJWは処方すべきではないとモーズレイ処方ガイドライン第13番では結論づけられています。

セントジョーンズワート(SJW)の問題「特に薬物相互作用に注意!」

セントジョーンズワート(SJW)は忍容性が高いため、副作用の問題はあまりありません。しかし、薬物相互作用には注意する必要があります。

セントジョーンズワートの副作用

SJWは忍容性が高く、副作用があまり出ないSSRIと比べても副作用は少ないです。SJWの副作用としては悪心や皮疹、倦怠感、不穏、光線過敏などがあります。他、SSRIと同様に出血リスクを高めることや、双極性障害の患者さんに投与した場合には軽躁状態を引き起こすこともあります。

【重要!!】セントジョンズワートの薬物相互作用

セントジョーンズワート(SJW)で特に気になる問題は、薬物相互作用です。特に、SJWのハイパフォリンという成分は、腸や肝臓のCYP3A4酵素などを強力に誘導することが分かっています。アルコールとCYP3A4を同時に摂取した場合、代謝速度が低下するため血中濃度が上昇し、毒性が生じる恐れがあります。SJWが使用されている製剤によってハイポフォリン含有量は50倍の幅があるため一概には言えませんが、SJWは危険なこともあると言えるでしょう。

他にもSJWは、ワルファリンやホルモン避妊薬、ジゴキシン、抗HIV薬などの血漿中濃度を著しく低下させることが分かっています。そのため、血栓症が発生したり、望まない妊娠をしたり、HIVウィルスが増加したりするなど、様々な病気の治療を阻害する恐れがあります。また、セルトラリンやパロキセチン、nefazodone、他セロトニン作動薬の薬剤グループの一つであるトリプタン系薬剤などと併用すると、セロトニン症候群が生じる恐れがあることが報告されています。そのため、投与している薬剤の副作用を誤解してしまい、上手くいっているはず薬剤を他の薬剤に変えてしまうということも起こるかもしれません。

まとめ

薬の効果は強力だけど、ハーブやサプリメントの効果はマイルドだから問題ないと考えている患者さんは多いです。しかし、セントジョーンズワート(SJW)に代表されるように、ハーブやサプリメントのなかには他の薬剤との相互作用で重大な問題をもたらすものもありますそのため、患者さんが処方された薬をきちんと服用しているかだけではなく、患者さんが自助努力で使っているサプリメントや民間療法、食事療法はないか確認することも非常に大切なのです。

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