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2021.07.092024.04.01

F31双極性感情障害[躁うつ病]の診断基準

F31双極性感情障害[躁うつ病]の診断基準

うつ病状態と違って躁状態を病的な状態であると認識していない患者さんは、少なくありません。躁状態のときには病識がないため、双極性感情障害[躁うつ病](以下、双極性感情障害)と正しく診断されるまでには何年もの時間がかかることが多いです。

この記事では双極性感情障害について、ICD-10に基づいた診断基準を解説します。

F31双極性感情障害[躁うつ病]の診断基準の概要

双極性感情障害の特徴は、以下の2つのエピソードを繰り返すことです。

・気分の高揚や活動性の増大を示す躁病エピソード

・気分の低下や活動性の減少を示すうつ病エピソード

なお、エピソードには躁病とうつ病以外に、混合性と呼ばれるものもあります。これは、躁状態とうつ状態が混ざった状態のことです。気分は高揚しているのに涙がこぼれたり、思考が動かないはずのうつ状態のなかでアイデアが次々と浮かんだりするなどの状態になります。あるいは、躁状態とうつ状態が日によって、ときには数時間でころころ交代することもあります。このような状態が2週間以上続く場合は混合性と診断されます、躁うつ病という名前から、躁病うつ病、あるいはうつ病→躁病というエピソードの繰り返しをイメージされやすいでしょう。しかし、まれですが躁病→躁病の患者さんもいて、この場合も双極性感情障害と診断されます。これは、病前性格や発症年齢、長期予後、家族歴などにおいて、躁病エピソードだけを繰り返す患者さんと、躁病エピソードとうつ病エピソードの両方を示す患者さんに多少なりとも類似性が見られるためです。反対に、うつ病→うつ病の場合は反復性うつ病性障害と診断されます。簡単なものですが、以下にエピソードの繰り返し別に診断名をまとめました。

・躁病→うつ病:双極性感情障害

・うつ病→躁病:双極性感情障害

・躁病→躁病:双極性感情障害

・うつ病→うつ病:反復性うつ病性障害

・うつ病→軽度の躁病(うつ病エピソードの後に軽躁病が見られる場合):反復性うつ病性障害

一般に、躁病エピソードは2週間から4、5ヶ月ほど続き、うつ病エピソードは6ヶ月ぐらい続くと言われています。特に高齢者の場合は、うつ病エピソードが1年以上続くこともあります。エピソードとエピソードの間は完全に回復した状態に戻りますが、年齢を重ねるほど寛解期は短くなる傾向があるようです。

F31双極性感情障害[躁うつ病]の各診断基準

うつ病エピソードでは基本的に軽症、中等症、重症の3つに診断が分かれていました。一方、双極性感情障害では現在の症状が躁病エピソードかうつ病エピソードかによって、どこまでの重症度が含まれるかが変わります。診断名に注意しながら内容を確認してください。

F31.0双極性感情障害、現在軽躁病エピソードの診断基準

・現在の症状は軽躁病(F30.0)に該当する

・過去に少なくとも1回以上の感情障害のエピソードがあった

F31.1双極性感情障害、現在精神病症状を伴わない躁病エピソードの診断基準

・現在の症状は妄想や幻覚などの精神病症状を伴わない躁病(F30.1)に該当する

・過去に少なくとも1回以上の感情障害のエピソードがあった

F31.2双極性感情障害、現在精神病症状を伴う躁病エピソードの診断基準

・現在の症状は妄想や幻覚などの精神病症状を伴う躁病(F30.2)に該当する

・過去に少なくとも1回以上の感情障害のエピソードがあった

F31.3双極性感情障害、現在軽症あるいは中等症うつ病エピソードの診断基準

・現在の症状は軽症うつ病エピソード(F32.0)あるいは中等症うつ病エピソード(F32.1)に該当する

・過去に少なくとも1回以上の感情障害(軽躁病性あるいは躁病性か混合性)のエピソードがあった

現在の症状がうつ病である場合、過去の感情障害には軽躁病性や躁病性、混合性のように躁状態が含まれる必要があります。これは、現在の症状がうつ病で過去の症状もうつ病なら、それは反復性うつ病性障害であると診断されるためです。

F31.4 双極性感情障害、現在精神病症状を伴わない重症うつ病エピソードの診断基準

・現在の症状は妄想や幻覚などの精神病症状を伴わない重症うつ病エピソード(F32.2)に該当する

・過去に少なくとも1回以上の感情障害(軽躁病性あるいは躁病性か混合性)のエピソードがあった

F31.5 双極性感情障害、現在精神病症状を伴う重症うつ病エピソードの診断基準

・現在の症状は妄想や幻覚などの精神病症状を伴う重症うつ病エピソード(F32.3)に該当する

・過去に少なくとも1回以上の感情障害(軽躁病性あるいは躁病性か混合性)のエピソードがあった

F31.6 双極性感情障害、現在混合性エピソード

・現在の症状は軽躁病とうつ病の症状が混在している、あるいは急速に軽躁病とうつ病の症状が交代する

・過去に少なくとも1回以上の感情障害(軽躁病性あるいは躁病性か混合性)のエピソードがあった

F31.7 双極性感情障害、現在寛解状態にあるもの

・現在の状態には気分障害の症状は全く見られない

・過去に少なくとも1回以上の躁状態を含んだ感情障害のエピソードと、1回以上の感情障害のエピソードがあった

再発予防の治療を受ける患者さんの診断に用いられます。

F31.8他の双極性感情障害

躁病エピソードのみを繰り返す場合や、DSMでいうⅡ型双極性障害(軽躁病の後にうつ病になる)が含まれます。

ほか、F31.9双極性感情障害、特定不能のものがあります。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など