分離不安症・分離不安障害
実は成人期発症も多かった分離不安症
以前は小児期の疾患と考えられていました
分離不安症・分離不安障害(separation anxiety disorder)は従来は幼児や小児等の疾患として考えられていました。しかし、最近の研究では成人の分離不安症の存在も多く認められ、そして実は成人に初発の分離不安症も多く、成人期の分離不安症の約半数以上が幼少期ではなく成人期の発症であったことからも、小児期における障害に含まれていた従来のDSM-Ⅳから、DSM-Ⅴでは不安症群・不安障害群に移行されました。
分離不安症とはどのような特徴のある疾患でしょうか?
分離不安症・分離不安障害は、自宅や家族など愛着を持っている人物からの分離に対して、過剰な恐怖や不安を抱いてしまう疾患です。そのような不安や恐怖は、不釣り合いな程強いか大きいものが特徴で、8つの状況をDSM-Ⅴでは診断基準として提示して、そのうちの3つが該当する証拠がある事が重要としています。
以下に診断基準について、要約しております。
【診断基準A】8つの状況のうち、3つが該当することが重要
状況①:愛着ある人物からの分離が予想されるまたは、経験される時に、繰り返して強い苦痛や不安を感じる
状況②:愛着ある人物を病気や事故・災害で失うかもしれないという、強い苦痛や心配を感じる
状況③:愛着ある人物と、誘拐や迷子、病気や事故などで離れてしまうかもしれないと感じる強い心配
状況④:愛着ある人物や家から離れるのが嫌で、外出や登校、仕事に対する拒否や拒絶
状況⑤:一人で過ごすことや、愛着ある人物と離れて過ごすことに対する、拒否や拒絶
状況⑥:家を離れて寝ることや泊まること、あるいは愛着ある人から離れて眠る事への抵抗や拒否
状況⑦:夢であっても、愛着ある人物と離れてしまうエピソードを主体とした悪夢をよく見る
状況⑧:愛着ある人物から離れることにより、頭痛や腹痛や吐き気・腹部の違和感などの身体症状を呈してしまう
【診断基準B】診断するための継続期間について
成人は症状が6か月以上、小児や18歳以下の青年は少なくとも4週間以上の、不安や恐怖、更にはそのような状況の回避が持続していることが重要です。
分離不安症の影響とは
これらの症状の継続から、就学や就職への拒否がなされたり、定期的な就学や通勤ができないことによる、失業や学業不振などの結果を招くこともあり、社会的な孤立を呈してしまうことがあります。また未婚や夫婦間の不和や破局などを招いてしまう事もあります。
また、自分本位で、干渉的であることもあり、家庭内でも葛藤を引き起こしやすい傾向もあります。また逆に機能不全家族の影響で、自立した自己をより築きづらい傾向となることもあります。
分離不安症のきっかけ
分離不安症のきっかけとしては、ペットの死や身内の不幸や病気・事故、引っ越しや天災などの大きなストレスがきっかけであることが多いと言われています。
分離不安症の注意点とは
分離不安症は、全般性不安障害や発達障害など他の精神疾患の一部症状と近似することもあるために、他の疾患との鑑別は重要です。特に、他の精神疾患の結果、分離不安症様の症状を呈している時には分離不安症との診断とはならないことには注意が必要です。
分離不安は状況を避けることで、不安をコントロールしていることも
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など