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2023.12.202024.01.20

双極性うつ病の薬物療法と再発予防

双極性うつ病の薬物療法と再発予防

双極性うつ病の診断基準と、単極うつ病での大うつ病エピソードと診断基準は一部同じです。しかし、再発の傾向や重症度、経過などが異なるため、薬物療法への反応は当然違います。そのため、単極性うつ病と双極性うつ病とでは、薬物療法で使われる薬が異なる点に注意しなければなりません。

この記事では双極性うつ病の治療で使われる薬や、再発予防のために使われる薬について解説します。

双極性うつ病の治療の第一選択薬は、オランザピンやクエチアピン

単極性うつ病の場合、多くのエビデンスからSSRIが第一選択薬となると結論付けられています。しかし、双極性うつ病では第一選択薬についてはまだ議論が行われています。その理由として、まず双極性うつ病については最近まで無作為化試験があまり行われてこなかったためです。

また、試験によって評価法が異なるため、一概に比較できないことも挙げられます。さらに、双極性うつ病では一つひとつのエピソードよりも長期的な転機を考えなければなりません。しかし、長期的な治療効果や副作用についてはまだ知見が限られています。この記事ではモーズレイ処方箋ガイドライン第13版に基づいた知見をお伝えしますが、情報のアップデートは日々大切になります。

2021年3月時点で、プラセボよりも有意に治療効果があると言われている治療法のなかで最も効果量が大きいのは、オランザピンと日本では未承認ではあるがfluoxetineの併用であるとされています。

オランザピン単独での治療でもプラセボより有効ですが、fluoxetineと併用することでさらに治療効果が高まることが分かっています。そのため、イギリスのNICEでもfluoxetineとオランザピンあるいはクエチアピンの併用が双極性うつ病の治療法として推奨されているのです。

他にも、クエチアピンの単独使用も有効であると考えられています。また、クエチアピンは治療効果があるだけではなく、うつ病や躁病の再燃を防ぐことや、躁転とは関連しないことが分かっています。なお、気分安定薬と抗うつ薬の併用も双極性うつ病の治療で行われることがありますが、これについては周期を速めて躁転させるリスクが指摘されています。

双極性うつ病の再発予防に有効なのはリチウム

双極性うつ病の気分エピソードの期間の中央値は13週間と言われていますが、実に4人に1人は1年以上経っても症状が残ります。

単極性うつ病の再発予防の場合、急性エピソードで用いられた薬を飲み続けることが多いですが、双極性うつ病の再発予防や長期治療ではリチウムが最も有効であると多くのエビデンスから考えられています。NICEでも双極性うつ病の再発予防の第一選択薬としてリチウムが推奨されています。とはいえ、これまでの治療薬とは違う薬を使うことによる症状の悪化や副作用を心配する患者さんもいるでしょう。双極性うつ病の長期治療や再発予防にはリチウムが最も有効であることを説明した上で、リチウムに切り替えてよいかを患者さんと話し合う必要があります。

患者さんによってはリチウムでは効果が不十分なことや、忍容性が低いことがあるからです。リチウムの効果が不十分な場合は、第二選択薬としてバルプロ酸を追加することが推奨されています。なお、バルプロ酸は妊娠可能な女性には使用できない点には注意しなければなりません。また、忍容性が低い場合にはバルプロ酸かオランザピンが第二選択薬として挙げられます。

薬物療法を終える場合は

双極性うつ病の薬物療法を終えるにあたり、再発の兆候にはどのような状態になるかや、再発した場合にはどうしたらよいかを患者さんとしっかり話し合うことは大切です。薬を少しずつ中止していく際に再発の兆候をモニタリングすると、再発するときにどんな状態になりやすいかが患者さんにも分かりやすいこともあります。特にリチウムは突然服用を中止すると、その後の転機が悪いと言われています。どの薬でも言えることですが、特に薬物を減量する際は慎重に行いましょう。

単極性うつ病と同様に、双極性うつ病も再発率が高いです。そのため、気分が興奮しすぎたり落ち込みすぎたりすることはないか、イライラすることはないか、眠れないあるいは寝なくても平気なことはないかなど、2年間はしっかりモニタリングする必要があります。なお、これは精神科や心療内科クリニックを受診してもらうほどでないこともあります。しかし、異変に気が付き早めに医療機関に受診して必要な診療を受けることはとても大切です。

まとめ

双極性うつ病の治療におけるオランザピンあるいはクエチアピンについて紹介をしました。NICEに於いて、再発予防ではリチウムが第一選択薬として推奨されています。とはいえ、特に双極性うつ病の治療についてはまだいくらか議論が行われていますのと、各種ガイドラインによってその見解は少し変化があります。現状の薬物療法がベストではないので、新たなガイドラインが出るたびにしっかり確認することは大切です。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など