クリニックブログ

2025.07.282025.07.28

不器用さの背後にある「発達性協調運動症」とは

不器用さの背後にある「発達性協調運動症」とは

「うちの子、なぜか運動が苦手で心配」「仕事中の細かい作業で人より手間取ってしまう」…そんな違和感を覚えたことはありませんか?

もしかすると、それは単なる性格や努力不足ではなく、「発達性協調運動症(DCD:Developmental Coordination Disorder)」と呼ばれる神経発達症の可能性があります。

本記事では、発達性協調運動症の症状や診断、そして適切なサポート方法までを、子どもから大人まで幅広い視点でわかりやすく解説します。

発達性協調運動症とは?

発達性協調運動症は、知的発達や視力・聴力に明らかな問題がないにもかかわらず、日常動作や身体の動きに著しいぎこちなさが見られる発達障害の一種です。

例えば、ボールを投げる、階段を昇る、字を書く、ボタンをとめるといった日常の動作に時間がかかり、年齢相応の動きがスムーズにできません。多くは幼児期や学齢期に気づかれますが、大人になってからその特性に初めて向き合うケースも増えています。

この不器用さは、繰り返し練習してもなかなか改善されないことが多く、本人の意欲や努力とは関係なく、脳の運動計画や制御に関わる情報処理の仕組みに起因すると考えられています。

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どのような困難が現れるのか?

粗大運動(体全体を使う動作)のぎこちなさ

✅走る、ジャンプする、自転車に乗る、ボールをキャッチするなどの動作が苦手

✅バランス感覚が不安定で転びやすい

✅体育やスポーツ活動に消極的になりやすい

このような動作の不器用さは、遊びの場面で他の子に遅れを取ったり、集団行動から外れたりする原因になりがちです。

微細運動(手先の細かい動き)の不器用さ

✅字が歪んでいたり、書くスピードが極端に遅かったりする

✅はさみ、箸、ボタン、紐などの道具の扱いが苦手

✅パズルや工作、楽器演奏に困難を感じる

これにより、授業中の作業に時間がかかる、課題を最後まで終えられないといった二次的な学習上の問題が生じやすくなります。

社会的・心理的な影響

不器用さが続くことで、他者との比較や失敗体験が積み重なり、次第に自信を失ったり、集団活動を避けるようになることも。特に体育や遊びが評価の対象となる幼少期には、「できない子」と見られがちで、人間関係の形成にも影響を及ぼすことがあります。

なぜ起こるのか?…原因と併存の特徴

発達性協調運動症の原因は明確にはわかっていませんが、以下のような要素が指摘されています

✅脳の運動に関わる領域(小脳・大脳皮質など)の情報処理の違い

✅遺伝的背景(家族内に類似の症状が見られる場合も)

✅低出生体重や早産などの周産期要因

また、DCDはADHDや限局性学習症(読み書き障害など)を併存することも多く、注意力のコントロールや学習面での困難を伴うことがあります。これらが重なることで、生活全般への影響はさらに複雑になります。

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診断と評価の進め方

DCDの診断には、日常生活における影響と運動機能の評価が必要です。診断は医師(主に小児科・児童精神科)や発達支援の専門職によって行われ、以下のようなプロセスが含まれます。

✅問診・発達歴の確認➡幼児期からの運動発達、生活上の困難さを詳細に確認

✅動作評価➡ジャンプ、バランス動作、手先の巧緻性などをチェック

✅生活影響の評価➡学校や家庭、職場での具体的な困難の有無

評価ツールとしては、運動機能検査(M-ABCなど)や行動観察、発達検査などが用いられます。

「支援と対処法」どう付き合うか

発達性協調運動症は、症状そのものを根本的に”治す”というよりも、生活をしやすくするための「適応支援」が中心となります。

運動療法・作業療法

理学療法士・作業療法士による専門的アプローチでは、楽しみながらスキルを身につけられる工夫がなされます。反復練習と成功体験を重ねることが自己効力感の向上にもつながります。

環境調整と合理的配慮

✅字を書く代わりにタブレットやPCの活用

✅着替えがしやすい服装(マジックテープ式など)

✅体育の一部免除や代替活動

✅書き取りの時間延長や宿題量の調整

家庭や学校・職場の理解

特性を正しく理解してもらうことで、本人が孤立せずに過ごすための土壌が整います。特に幼少期の家庭支援では、親自身が心理療法やカウンセリング・ペアレントトレーニングを受けることで、子どもへの対応に自信が持てるようになります。

不器用さは「見えにくい困難」かもしれない

発達性協調運動症は、表面的には「ただの不器用」に見えるかもしれません。しかし、その背景には、脳の働き方の違いによるれっきとした発達特性が関連している面もあります。

また誤解されやすく、見逃されやすいこの症状を正しく理解することは、本人の生きづらさを和らげ、よりよい支援につなげるための第一歩です。「努力が足りない」と責める前に、「工夫すればもっと楽になるかも」と視点を変えてみる。その意識が、不器用さの陰にある可能性を照らす光になります。

気になる症状がある場合は、早めに専門機関に相談してみることもおすすめします。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など