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2022.12.262024.04.01

病気不安症~有病率や発展・経過などの関連情報~

病気不安症~有病率や発展・経過などの関連情報~

前編の記事では、病気不安症の大まかなイメージや診断基準を説明しました。
後編では病気不安症の有病率や発展・経過などの関連情報について、DSM5をベースに説明します。

有病率

「病気不安症」という用語はDSM5から用いられるようになったので、正確な有病率は分かりません。身体症状症と病気不安症などを包括する心気症の推計に基づいた有病率は、以下の通りです。

・地域調査および一般人口での調査:健康不安および/または疾病確信の1~2年有病率は1.3~10%
・一般身体科の外来患者を対象にした調査:6ヶ月または1年有病率は3~8%

なお、有病率に男女差はありません。

症状の発展・経過

一般的に、病気不安症は成人期早期・中期に発症し、半数の患者さんについては慢性で再発すると考えられています。なお、子どもが発症することは稀です。

一般的に、年齢が高いほど健康に関連する不安は強くなります。ただし、健康不安の強い患者さんと他の病気の患者さんとの間に年齢差はないようです。また、高齢者では身体疾患よりも物忘れに不安を持つ方が多いです。

リスクファクター

病気不安症のリスクファクターとして、以下があります。

・生活上の大きなストレス

・一時は深刻な病気かもしれないと思ったが、結局のところ特に問題はなかったという出来事

・子ども時代におけるリスク

(例 子どものときに受けた虐待、重篤な小児疾患の既往歴)

病気不安について名古屋市栄の心療内科,精神科,メンタルクリニックが解説

鑑別診断

病気不安症と鑑別すべき疾患として、以下があります。

他の医学的疾患

本当に深刻な身体疾患がある場合、強い健康不安を抱くことは妥当であるので病気不安症とはなりません。ただし、実際の身体疾患の重症度と比べて病気へのとらわれが釣り合わない場合は、身体疾患と病気不安症が併存していると言えます。

また、身体疾患を発症すると不安になるものですが、そういった不安は長くは続きません。病気不安症という診断が下されるには6ヶ月以上不安が持続している必要があります。

適応障害

健康不安が十分に重症であるけれども6ヶ月以上その不安が持続していない場合、適応障害の診断を下すほうが妥当でしょう。

身体症状症

身体症状症と病気不安症は、いずれも身体症状症および関連症群の疾患の1つです。身体症状症では痛みや吐き気など何らかの身体症状があることが典型的です。「ずっと頭痛がするので仕事に集中できない。大きな病気でなければいいけど…」といった具合で、実際に存在する身体症状やそれと関連した健康への不安に悩んでいます。一方、病気不安症では身体症状はあまりないにもかかわらず、「自分は深刻な病気にかかっている」と患者さんは病気にとらわれているのです。

不安症群

「不安」を強く抱いているという点で不安症群と病気不安症は似ています。しかし、不安の内容に違いがあります。

全般不安症…色々な出来事や活動、状況について不安を抱く。

健康へ不安を抱いていたとしても、たくさんある不安の1つにすぎない。

パニック症…パニック発作に対して強い不安を持つ。

パニック発作の原因として身体疾患を考えることもあるが、「電車に乗ったときにパニック発作が起きたらどうしよう…」というように、非常に急性・エピソード性のある不安を抱く。

ただし、病気への心配が原因となって病気不安症の患者さんにパニック発作が生じることもあります。

強迫症および関連症群

強迫症の患者さんのなかには、病気に関連した侵入思考を持つ方もいます。しかし、不安の時間軸について病気不安症と強迫症では違いが見られます。病気不安症では「(まさに今)自分は深刻な病気を患っているのでは」と不安を抱くでしょう。一方強迫症の強迫観念では、「しっかり手洗いをしなければ(近い将来に)ウィルスに感染するかもしれない」と不安に思うのです。

うつ病

妄想といえば統合失調症のイメージが強いですが、うつ病でも心気妄想・貧困妄想・罪業妄想の微小妄想が見られることがあります。そのため、うつ病の患者さんも「自分は深刻な病気ではないか」と強い不安を抱えることがあります。抑うつエピソードのときにこのような不安が見られる場合はあくまでもうつ病の症状の1つと見なされ、病気不安症と別個に診断されることはありません。ただし、うつ病の寛解後にも病気への過度な心配が持続する場合は病気不安症と診断されることもあります。

精神病性障害

病気不安症の患者さんが抱く不安は精神病性障害で見られる妄想と異なり、もっともらしいものです。例えば、奇異な健康不安(例 肝臓が毒で腐っている)を抱くことはありません。

文化に関連する診断的事項

病気へのとらわれが文化的に納得できる考えである場合、病気不安症と診断を下せないこともあります。例えば、2021年8月では重症化しやすい新型コロナウイルスのデルタ株が流行していました。喫煙習慣のある方がしばらく咳き込んでいたときに「もしかしたら自分もコロナウイルスに感染したのでは?重症化するのではないか?」と不安に思うのは自然なことですので、病気不安症とは言えないでしょう。

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