“大人の発達障害(アスペルガー症候群)とは?“
アスペルガー症候群とは?
アスペルガー症候群とは、「自閉症スペクトラム」に分類される「臨機応変に人と接することが苦手で、自分の関心・やり方・ペースの維持を最優先させたいという志向が強いこと」を特徴とする発達障害です。
周囲からは「融通がきかない」「ちょっとこだわりが強い」というマイナスイメージを持たれることが多いのですが、ポジティブに言えば、「どんなときも自分のペースを守り、コツコツがんばり続けること」ができる人と言えます。このように、「ちょっと変わった人」と認識されるだけだと、発達障害であっても、特別な困り感なく日常生活を送ることが出来ます。
しかし、不適切な環境におかれると、自閉症スペクトラム(ASD)が自閉症スペクトラム「障害」と言われるように、不都合や「障害」が発生してしまうこともあります。
アスペルガー症候群の頻度とは
アスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラムの方は一定数存在するとされており、具体的な数字としては人口の1~2%存在すると報告されています。現在調査中ですが、最新のわが国の研究ではさらに多く、人口の3~5%程度という報告が出されています。また、男性の方が多いとされています。
なお、「アスペルガー症候群」は、「自閉症スペクトラム(ASD)」や「広汎性発達障害」と呼ばれる概念の中に含まれるもので、自閉症、特定不能の広汎性発達障害も含まれます。これらはそれぞれ特徴があるのですが、概念が重なることもあり、互いの境界線を引くのは極めて厳しいため、最近では「自閉症スペクトラム(ASD)」というより広い範囲を示す呼び方が一般的となっています。
自閉症スペクトラムの特徴と症状
自閉症スペクトラムは、以下の2つの特徴が組み合わさって出現します。
①対人関係と対人コミュニケーションの質に特徴があること
②興味の対象が著しく限られていること、パターン的な行動があること
以上の点は、人によって程度の差があり、また自閉症スペクトラムに限らず、私たちが多かれ少かれ個性であることもあります。しかし、これらの特徴が強く出てしまった場合、社会的生活に困難を引き起こします。
詳しく見ていきましょう。
【特徴①】「対人関係と対人コミュニケーションの質に特徴があること」
これは言葉に限らず、他人との関りの中で、コミュニケーションをとったり、喜び・興味や達成感を分かちあったりするときの姿勢のことなどを指します。視線・表情・姿勢・友人関係なども含まれます。
自閉症スペクトラムの人の具体的な特徴としては、
①ひとりでいることを好む
②関わりやコミュニケーションが受け身である
③関りやコミュニケーションが一方的である
④人の気持ちを配慮することが苦手である
自閉症スペクトラムの人の、言葉を用いたコミュニケーションでの特徴の例としては、
①話し言葉が遅れている
②「オウム返し」が多い
③話すときの抑揚に特徴がある
④言語による指示を理解できない
⑤会話がかみ合いにくい
⑥敬語が不自然である
⑦皮肉を言っても通じず、たとえ話がわからない
自閉症スペクトラムの人は、言葉を用いない(非言語的)コミュニケーションにおいては以下の例があります。
①身振りや指差し(体の動き)が理解できない
②言外の意味が理解できない
③話しの文脈が理解できない
次に、2つ目の特徴についてみていきます。
【特徴②】「興味の対象が著しく限られていること、パターン的な行動があること」
この特徴は、例えば次のような行動に表れます。
①特定の物事に対して強い興味を持つ
②特定の手順を繰り返すことにこだわる
③同じ動作を繰り返す
④興味を持った領域に関して膨大な知識を持つ
一日の中で、絶対に変えられないルーティーン、自分ルールを持っていたり、鉄道、天気、生物、地理、コンピュータなど、様々な分野について学者以上に詳しかったりすることもあります。
自閉症スペクトラムでも普通の人生を送れる
自閉症スペクトラムの人の中には、社会で大成功を収めていたり、少々変わった人程度で済んだりしているケースもあります。一方、非常に生きづらく、厳しい人生を送っている状態の方もいます。
なぜでしょうか?
前述したように、自閉症スペクトラムは障害になるパターンもありますし、障害にならないパターンもあります。つまり、「障害」だと感じないような生活や環境で過ごすことが出来れば、障害を持たない人と同じように過ごすことが出来るのです。
「障害」にさせないためには、「できることをしっかりやっていき、個性を伸ばす」「できないことは無理をせずやらない」という考えのもと、その人に合った環境を考えていくことが重要なのです。
自閉症スペクトラムの方は、環境さえ合えば、圧倒されるような困難感を抱くことなく人生を送れますし、また、大きな力を発揮することもあるからです。
アスペルガー症候群や自閉症スペクトラムかと思ったら……
ここまでみてきたような特徴が自分に当てはまると思う方は、一定数いらっしゃるはずです。しかし、「自分はアスペルガー症候群や自閉症スペクトラムかな?」と思ったとしても、生活の上で自分も周囲も特に困っていなければ、何も気にしすぎる必要はありません。個性を生かして充実した人生が送れるはずです。
しかし、社会生活の中で何らかの生きづらさを感じているようであれば、当院にご相談ください。
当院では、アスペルガー症候群の方たちの症状に合わせて、外来での治療や助言を行っております。行動療法など環境調整は、その他に精神保健福祉士とも連携をして、就労移行や就労支援・リワークなどの社会サービスのご案内をさせて頂くことも可能ですのでお気軽にご相談ください。
もちろん、アスペルガー症候群の併存したうつ病・不安症などは、少量の抗うつ薬などで治療をする必要がある場合もあるので、自己判断なさらず、ぜひ受診されることをお勧めいたします。
野村紀夫 監修
医療法人山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など