カタトニアとは緊張やあがり症の症状ではありません
カタトニアとは、緊張病といわれる身体症状も多様な精神症候群です
カタトニアは、従来は統合失調症の亜型とされて、緊張病・カタトニアが出ると、統合失調症と考えられていた時期もありました。
しかし、現行のDSM-5では気分障害であるうつ病や双極性障害によるカタトニアの存在も認められ、特に双極性障害などの気分障害に関連したカタトニアの存在が大きいことが判明しており、統合失調症に関連するだけではなく、症候群として扱われるようになりました。
カタトニア・緊張病は、あがり症や単なる緊張とは異なります
カタトニアは、単なるあがりや緊張といった身体症状ではなく、硬直や昏迷・錯乱といった、おおよそ想定しうる緊張から考えられる身体症状や精神症状ではなく、どちらかというとてんかんやけいれんといった意識障害を伴う兆候に、表現が近いかもしれません。
DSM-5 では、カタトニアの診断基準として ①昏迷(精神活動の低下)、②カタレプシー(受動的な姿勢を保つ)、③蝋屈症(他者による受動的な姿勢の形成に抵抗する)、④無言症(言葉がほとんど出ない)、⑤拒絶症(刺激に対して反応しない、あるいは無視)、⑥姿勢保持(重力に拮抗して維持している姿勢)、⑦わざとらしさ(どこか大げさなまね)、⑧常同症(反復的で時として意味を持たない繰り返した行動)、⑨外的刺激の影響によらない興奮、⑩しかめつら、⑪反響言語(他人の言葉をまねる)、⑫反響動作(他人の行動をまねる)
これらの12個の症状のうち、3つ以上の症状の該当がカタトニア・緊張病では重要なのです。
カタトニアは緊張病やあがり症と異なり、意識レベルの変化や身体的な強直が強いことが特徴です
いずれも緊張やあがり症状とは、身体的な硬直や違和感、精神的な意識レベルが大きく異なるという点が特徴です。また、時としてカタトニアは、意識的な低下と高まりを言ったり来たりすることもあります。
カタトニアの症状は時として、長期的に継続することもあります
緊張やあがり症は、状況の背景に応じて症状の変動が見込まれます。つまり、不安やあがる状況・緊張する状況から離れると、症状が緩和されることがほとんどです。
一方でカタトニアは、症状の多少の変動があったとしても、緊張から離れた場所やリラックスできるような環境に周囲が変化したとしても大きく症状が変動することは少ないことがほとんどで、中には数か月から1年以上症状が継続してしまう方もみえます。
カタトニアの治療とは
カタトニアの診断・治療では原疾患の症状の把握や治療も重要ですが、薬剤性や脳炎や神経変性疾患などのそのほかの疾患が提供している可能性についての確認は大切です。
そのために、カタトニアを疑った時には、採血や脳のCT・MRIなどの確認は重要で、カタトニアと診断された際には定型抗精神病薬の中止や、カタトニア症状に対する治療としてのベンゾジアゼピン薬や、電気けいれん療法(ECT)が有効とされています。
また、身体的な強直や精神症状の影響により、入院などで食事や睡眠などの管理も治療と共に必要であることも多いのが特徴です。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など