うつ病の症状や原因、治療薬について
うつ病の症状とは
うつ病にかかっている方は、全国に約70万人以上 いると言われています。しかしうつ病の症状が出ているのに医療機関を受診していない方は、3倍以上にあたる約230万人もいると推定されているのです。
中にはうつ病について相談しづらいと感じている方もいるかもしれません。また自分がうつ病なのかわからず、医療機関の受診に至っていない方もいるでしょう。
うつ病では以下の症状がよく見られます
- ・食欲がわかない
- ・ベッドに入ってもなかなか眠れない
- ・すぐに疲れてしまう
- ・やる気がおきない
- ・不安や焦りがある
- ・物事への興味がわかない
- ・動悸や息苦しさがある
- ・集中力や思考力の低下
うつ病の原因とは
うつ病になる原因はまだハッキリしていない部分もありますが、現在では2つの仮説が有力です。
うつ病の原因として「モノアミン仮説」と「神経細胞新生仮説」の2つが考えられています。
〈モノアミン仮説〉
うつ病の原因として重要視されているのがセロトニンやノルアドレナリン、ドパミンといった3つの神経伝達物質です。セロトニンが時に幸せホルモンと呼ばれることは、ご存知の方もいるかもしれません。通常であればこれらの神経伝達物質が不足することなく正常に働いています。しかしうつ病の患者さんでは、セロトニンやノルアドレナリンなどの量が低下していることが特徴的です。
〈神経細胞新生仮説 〉
一般にモノアミン仮説が広く知られていますが、この神経細胞新生も原因ではないかと注目されています。海馬機能の低下がうつ病と関係があることが最近では明らかです。ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールが体内で増加すると、海馬が障害されてしまいます。さらには海馬の神経細胞が新しく作られにくくなってしまうのです。そのためモノアミン仮説とともに、神経細胞新生仮説も原因として考えられています。
うつ病にかかった時、日常で気をつけたいこと
モノアミン仮説や神経細胞新生仮説と少し難しい話になってしまいましたが、大事なのは心と体の両方をしっかり休ませてあげることです。仕事を休む、学校を休む、家事を休む。休むことへ遠慮や申し訳ない気持ちを感じることもあると思いますが、うつ病の治療では焦らずゆっくり、ムリをしないことが大切です。
うつ病に使われる治療薬
ゆっくりと時間をかけて治療していくうつ病。休むことでも症状の改善が期待できますが、お薬を服薬しながら症状をコントロールしていく方法が一般的です。ここでは代表的な治療薬と特徴についてご紹介します。
レクサプロ(エスシタロプラム)
セロトニンに着目した治療薬です。ノルアドレナリンやドパミンには働かず、セロトニンの濃度だけを増やします。そのためノルアドレナリンやドパミンに関係する副作用が抑えられていることが特徴です。セロトニンの不足は不安感や気分の低下を増強させることから、レクサプロはうつ病だけでなく社会不安障害にも適応を持ちます。
うつ病の再発防止への効果も確認されており、また服用を中止しても症状の再発が少ないお薬です。副作用として食欲不振や悪心などの消化器症状が知られていますが、1日に1回の服用でよく、安定したセロトニン増加効果が期待できます。効果が出るまでにはおよそ2週間から1か月かかります。
ジェイゾロフト(セルトラリン)
ジェイゾロフトもセロトニンのみを増加させる治療薬です。こちらはうつ病の他に、パニック障害や外傷後ストレス障害にも適応を持ちます。水で飲み込む一般的な錠剤タイプから、水なしで飲めるタイプまで種類があります。レクサプロとお薬の働き方が似ていますが、ジェイゾロフトにはわずかながらドパミンも増やす働きがあるのが特徴でしょう。
副作用として、消化器症状の他に性機能障害が起こりやすいことが知られています。同様の作用を持つ他のお薬と比べると、少々、下痢の症状が出やすいです。レクサプロと同様に効果が出るまで2週間から1か月ほど見る必要があります。
サインバルタ(デュロキセチン)
レクサプロとジェイゾロフトがセロトニンを主に増やすお薬であったのに対して、サインバルタはセロトニンに加えてノルアドレナリンの量も同時に増やすお薬です。バランス良くセロトニンとノルアドレナリンの量を増やしてくれます。
うつ病にも使われますが、痛み止めとしても使用されています。ノルアドレナリンも増やしてくれることから、意欲低下や倦怠感が見られるうつ病の方へとくに効果が期待されるお薬です。副作用としては嘔吐や下痢などの消化器症状や睡眠の質の低下が知られていますが、従来の抗うつ薬と比べるとだいぶマイルドになっています。2週間から1か月ほどで効果が見られるようになることが一般的です。
まとめ
うつ病の症状があっても、治療を受けていない方はまだまだ多くいます。気になることがあっても心の問題で片付けずに、ぜひ一度ご相談ください。治療薬にはそれぞれ特徴がありますので、症状に合わせた選択が必要です。どのお薬も効果が見られるまでに2週間から1か月ほどかかります。飲んでいるのに効かないからと自己判断で服用をやめてしまうと、症状が悪化する可能性もありますので、ゆっくりと効果の程度を確認しながら続けていきましょう。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など