【薬物治療/認知面の治療/家族のケア】パニック症の治療について
パニック症の治療について
パニック症・パニック障害の治療には、薬物療法や認知行動療法などの治療があります。
ここでは、パニック症の治療について紹介をしています。
【①パニック症の薬物療法】
パニック症の治療には薬物療法があります。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)など
うつ病の治療と同様に、抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)があります。また、パニック症はうつ病を合併しやすいことからも、うつ病を併発したパニック症の治療にも有効な治療となります。
即効性のあるベンゾジアゼピン系薬剤は状況に応じて併用
SSRIなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬の治療導入初期は効果の立ち上がりまでに少々の期間がかかることから、パニック発作の症状のコントロール目的として、即効性のあるベンゾジアゼピン系を併用することもあります。
但し、ベンゾジアゼピン系は長期的な使用によって、依存性、乱用などの問題も生じやすいため、セロトニン契約物であるSSRIなどを漸増しながら、できるだけベンゾジアゼピン系薬物の使用を減らしたり控えるように注意を払う必要があります。
自己判断をしすぎず、医師と相談をしながら、調整することが大切となります。
【②パニック症における認知行動療法】
パニック症にかかってしまった時の認知面・考え方について
パニック症の治療として、認知行動療法も有効とされています。
というのも、パニック症の特徴的なパニック発作は「死を予感する程」強烈で苦痛な症状であるために、
◆パニック発作の存在
◆パニック発作への予期
◆パニック発作への懸念
すべてが、『日常生活の最大の関心事項』になってしまうからです。
パニック発作に関連するすべての現象を、懸念や恐怖・不安に結びつけてしまう
これらの最大の関心事項へ、日々の意識がとられてしまうと、パニック発作に関連するすべての現象が「不安や恐怖の対象」「懸念すべき対象」となってしまいます。
「場所や状況」、「見ず知らずの環境」ですら、回避しようとしてしまう結果に
つまりは、起きたことがある場所・状況ですら、知らず知らずのうちに、「◎◎をするとパニック発作が起きる」「▼▼はパニック発作が起きてしまうかもしれないから、絶対に避けるべき」といった、ゼロイチ判断をしてしまうことがあるのです。
【他者からの否定の言葉や励ましの言葉】いっそう孤立を深めてしまうこともあり注意
不安感情と恐怖への強固な結びつきは、周囲からの「大丈夫だよ」「気にしすぎだよ」「それは誤解だよ」のような修正や否定の言葉でなかなか解消できることでもないということには注意が必要です。
というのも、本気で悩んでいる人にとっては、これらの言葉は「大丈夫と言われたのに、何が大丈夫なのか」「気にしすぎというが、貴方にとってはしょせん他人事」「誤解と言われても、いま自分の身に起こっていることは真実だ」という心理が逆に強烈に働きやすくなってしまうからです。
結果として、「誰も信じられない」「一番理解しているのは、自分しかいない」といった感情を抱いてしまい、よりいっそう周囲との孤立を高めてしまうことがあります。
認知行動療法で大切な事
困っている本人の気持ちに寄り添い、本人のかかえる「不安や恐怖」に立って考えて、適切な提案と寄り添う環境を構築することはとても大切です。
さらには医師や医療従事者のように、パニック症の特徴など、病気の事を分かっている人と共に認知行動療法や精神療法を行うことも大切でもあります。
なぜ医療従事者が良いのかというと、もし認知行動療法の経過中にパニック発作や症状が悪化した場合をも鑑みた対処方法やそのトレーニングも一緒にアドバイスできるからであり、その方法を取り入れながら取り組むことで結果として安心感と、パニック症に対する対処法と治療がさらに強化されていくからでもあります。
【③家族の支援やケアも大切】
どのように対応したらよいのか、分かりにくいと感じられるご家族も沢山いらっしゃる
パニック症の治療においては、家族の支援やケアもとても大切です。
ですが、なかなかどのように対応したらよいのか、分かりにくいと考えられるご家族様も多いように思います。
少しでも、参考になればと思い、ここで紹介をさせて頂こうと思います。
【本人は恥ずかしいという感情を持っていることも】孤独感や罪悪感は更に不安や恐怖を強めてしまいやすい
なぜなら時として、パニック症の患者さんは、「恥ずかしい」「家族に知られたら…がっかりされるかも」といった気持ちを抱いて、家族や身近な人への相談をためらってしまうことがあります。
【かわいそうだ、そんなに悪くて大丈夫?】プレッシャーや不安や恐怖を強めてしまっていないかには注意
また、パニック発作が出てしまった時に、「こんなに辛いなんて…かわいそうだね」「本当に辛そう」「そんなんで、本当に大丈夫?」といった声かけも、プレッシャーと不安や恐怖、更には罪悪感を強めてしまう声掛けと対応となってしまっており、かえってご本人にとって負担と感じてしまうこともあるという点にも注意が必要です。
【状況に応じた】安心感と寄り添いのケアは大切
「見て見ぬふりをする」のでも「過度に恐怖や不安を添える」のでもなく、【寄り添うケア】【安心感を与えるケア】はパニック症における支援やケアでは大切です。
例えば、「私も傍にいるよ」「大丈夫?何か手伝えることがあったら言ってね」のような相手を尊重する声掛けが良い時もあります。
しかし、状況に応じては本人の様子を見ながら、”あえてそっと見守ったり”、ご本人さんが混乱してしまっている時には落ち着けるように「大丈夫。大丈夫だよ」と積極的に声掛けや背中に手を添えるなどの対応も、本人の様子を見て随時選択することも大切です。
【パニック症にかかってしまった時】家族のケアや支援とは?(ブログ)でも詳しく紹介をしています。
さいごに
パニック症の治療法について、薬物療法と認知行動療法、更には家族のケアについて解説をしました。
これらの治療やケアは、併用や組み合わせで効果が高くなることもあり、また個々の症状・状況に合わせた対応が必要となるので、自己判断しすぎず精神科・メンタルクリニック・心療内科などの医療機関へ相談されることもお勧めいたします。こちらのブログでもパニック症に関する情報を記載をしております。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など