クリニックブログ

2023.07.052024.04.01

認知の歪み

認知の歪み

「認知の歪み」という専門用語は、特にうつ病患者さんによく見られる悪い方向に考えてしまう思考パターンで紹介されることもあります。しかし、認知が歪んでいるのはうつ病患者さんに限った話ではありません。その精神疾患特有の歪んだ認知があります。

この記事では、うつ病患者さん特有の「認知の歪み」を紹介したうえで、他の不安障害として社交不安障害の患者さんの歪んた認知を紹介します。

名古屋市栄の心療内科,精神科,メンタルクリニックのひだまりこころクリニック栄院

10種類の認知の歪み

試験で90点を取った場面を考えてください。この結果をどのように解釈するかによって、その後の気分は変わります。

「90点も取れた。よくやったなぁ」と考えたとしたら嬉しいと思うでしょう。反対に「90点だなんて…。あれだけ頑張ったのに理解できていないところがまだあったんだ…」と考えたとしたら落ち込むでしょう。結果の解釈パターンは、性格と同様に変わりにくいです。そのため、実際よりも悪い方向に歪めて考えてしまう場合は常に落ち込むことになり、その結果としてうつ病に陥るリスクが高くなります。

精神科医バーンズによると、このような認知の歪みには以下の10種類があります。

①全か無か思考

成功か失敗か、良いか悪いかなど、物事を0か100かのどちらかでしか考えられない

(例)作品を完ぺきにできなかったから、全く嬉しくない

②過度の一般化

たまたま起きた悪い出来事が、今後も違う状況でも起こるに違いないと思う

(例)好きな人に告白したけど、振られてしまった…。きっと私を愛してくれる人は一生現れないんだ

③心のフィルター

まるでフィルターがかかっているかのように、自分にとって良いことや嬉しいことは見えず、悪いことや悲しいことばかりを考えてしまう

(例)テストで90点だったなんて…。頑張った結果が全然出ていない

④マイナス化思考

悪い出来事だけではなく、良い出来事やどちらでもない出来事でも悪い方向へ解釈してしまう

(例)(片思いだった相手と付き合うことができたことに対して)今は彼はフリーだから付き合ってくれているだけなんだ。素敵な人が現れたら、きっと私は捨てられるに違いない

⑤結論の飛躍

根拠もないのに思い込みで悲観的な結論を出す

(心の読みすぎの例)恋人が私の作った料理を残した。私と別れたいと思っているんだ

(先読みの誤りの例)私は一生独りぼっちで暮らしていくんだ

⑥拡大解釈と過小評価

悪いことは過大評価し、良いことは過小評価する

(例)他人がミスしたときには「これくらいよくあることだよね」と思う。一方、自分が同じミスをしたときには「とんでもないことをしてしまった!」と深刻に思う

⑦感情的決めつけ

そのときに生じた自分のネガティブな感情だけを使って、出来事を判断する

(例)あの人と話しているとき、イヤな感じがした。きっとあの人は私のことを嫌っているに違いない

⑧すべき思考

何か行動するにあたり、「~すべきだ」という切迫感にかられる。「できたらいい」、「試しにしてみよう」といった心のゆとりを持つことができない

(例)昨夜は気づいたら寝てしまっていた。昨夜の分もしっかり勉強しなければならない

⑨レッテル貼り

たった一度の出来事から、自分や他人に悪いレッテルを貼り、それ以外の部分を見ようとしない
(例)今日はこの宿題をしなければならなかったのに、できなかった。やっぱり自分はダメなんだ

⑩個人化

何か悪いことが起きたときに、その原因は自分にあると思うこと

(例)赤ちゃんの育ちが悪いと医師に言われた。きっと私がちゃんと育児をやれていないからだ

社交不安障害の患者さんによく見られる歪んだ認知

先のバーンズの10種類の認知の歪みだけではなく、その精神疾患の特徴を反映するような歪んだ認知が不安障害強迫性障害の患者さんには見られます。例えば、社交不安障害の患者さんの場合、以下のような歪んだ認知もよく見られるものです。

①社会的行為に対する極端に高い基準

コミュニケーションや発表などの場面を上手にこなさなければならない

(例)相手が話しやすい話題をふったり、ちゃんと相づちを打ったりして気の利いた人に思われなければならない

②条件付き信念

「もし~ならば、~である」という条件のある思い込み

(例)相手の言うことに少しでも同調しなかったら、相手に嫌われるに違いない

③無条件の信念

常に自分に付きまとうネガティブな評価。漠然としたものであることが多い

(例)私は、一緒にいても楽しくない人間だ

さいごに

大枠としては上記のような歪んだ認知が見られますが、その中身が患者さんによって細かく違います。認知行動療法で患者さんの認知の歪みを修正するには、患者さんの認知がどのように歪んでいるのか、何がキーワードとなるかをしっかり理解することが大切です。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など