広場恐怖症とパニック障害との違い
広場恐怖症とパニック障害について解説をしております
広場恐怖症とパニック障害の関連について
広場恐怖症/agoraphobiaはICD-10 では”神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害”の分類の中の「恐怖症性不安障害」に記載されています。
また、DSM-5 では”不安症群や不安障害群”の分類の中に記載されており、ICD-10,DSM-5のいずれでも「パニック障害」と「広場恐怖症」は区別された疾患として記載をされております。
広場恐怖症とはどのような疾患なのか
【広場恐怖症とパニック障害との違い】6か月の継続、逃げられない状況下での発症、症状はパニック発作でなくても良い
広場恐怖症とは、自分が制御できない症状や状況が起きてしまった時に、逃げることができない状況や場所で、強く不安や恐怖が生じてしまう事です。
広場恐怖症が起きてしまいやすい場所は、広大な敷地である公園やデパート・駐車場などではなく、電車・バス、駅や映画館、その他エレベーターや橋・トンネル等、すぐに逃げだしづらい場所で起きることが特徴です。
広場恐怖症の不安や恐怖の結果として、パニック発作を生じてしまう事は、広場恐怖症の診断基準としても重要視されていますが、必ずしもパニック発作である必要はなく、耐えられない不安や恐怖も有用です。また不安の継続が6か月以上継続していることが診断では必要です。
パニック障害とはどのような疾患なのか
【パニック障害と広場恐怖症との違い】1か月の継続、環境背景や状況に影響されず繰り返しパニック発作が起きてしまう
パニック障害とは、繰り返すパニック発作の出現や、状況や環境的背景にも影響されず繰り返し出現する不安や身体症状のことを指します。
強く重篤な、身体的な発作の存在が重要で、死や自制心の喪失や発狂といった二次的な恐怖が継続することもあります。また広場恐怖症と異なり、症状が1か月継続していることが診断に有用です。
また、パニック障害は、確定した恐怖症の結果生じるパニック症状とは区別されます。
広場恐怖症とパニック障害のどちらを主診断とするのか
広場恐怖症とパニック障害は合併することがあります。ICD-10 でも広場恐怖症のF40.0コードにパニック障害の有無を明記することで運用をしています。
以前は広場恐怖症はパニック障害の症状の結果としての二次的な疾患であると考えられていましたし、パニック障害の中の分類として広場恐怖症が位置付けられていた時もありました。しかし、現在は先にも記載をしたように、「広場恐怖症」と「パニック障害」は別の疾患として分類されています。
ですので、広場恐怖症やパニック障害は互いの存在に関係なく診断されるので、広場恐怖症・パニック障害の療法の診断を満たしている方もみえます。また、どちらの病名を主病名とするのかといった着眼点については以下に解説をいたしております。
【広場恐怖様の症状が出現しているとき】どちらの障害が大きく支配しているのか、先行の症状や二次性の関係性を確認
特に、広場恐怖様の症状が出現している時、パニック障害か広場恐怖症かどうかは経緯や症状の特徴や生活面などを詳しく診察した上で診断がなされます。
広場恐怖症、パニック障害のどちらが臨床像を支配しているか。またどちらの症状が先行しているのか、互いに二次的な症状となりうる可能性はあるのか。この点が、どちらを主診断とするのかという点で重要です。
また、パニック症や恐怖症以外にも、うつ病や躁うつ病・双極性障害などの気分障害が関連している場合も大いにあるために、抑うつエピソードの有無や躁病エピソードの有無などの問診はとても大切です。
もし広場恐怖の症状が出現している方は、心療内科やメンタルクリニック・精神科までお気軽にご相談くださいませ
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など