女性の9割が経験したことある月経前症候群(PMS)夫や恋人の力も借りて!
月経前1週間ぐらいになると、何だかイライラしたり、眠くなったりして、いつも通り生活できなくなって困りませんか?これは月経前症候群・PMSと呼ばれるものです。
月経で苦労するのはみんな同じだから…、月経が終われば元に戻るから…と我慢している人も多いと思います。でも、自分一人での我慢には限界があります。時には人の力を借りてもよいのではないでしょうか。
この記事では、月経前症候群の認知度や、意外と男性も月経前症候群について理解を示してくれそうだということをお話しします。
月経前症候群についての「男女の認識のズレ」とは
月経前症候群(PMS)とは、月経日前の3~10日ぐらいにイライラする、眠くなるなどの精神症状や、胸が張ったり肌が荒れたりするなどの身体症状が出るけど、月経が始まると収まっていくという心身の不調のことです。女性の社会進出が進んでいる現代におけるPMSの認知度や男女の意識差を明らかにするため、小林製薬では2012年に20~40代の女性309人と20代の男性309人を対象にPMSの意識調査を行いました。
約9割の女性が「月経前症候群・PMS」で苦しんだ経験がある
小林製薬の調査の結果、女性については以下が分かりました。
・PMSを経験したことがある女性は85.9%もいる(※これは20~40代の女性5,000人を対象にした予備調査の結果です)。
・PMSで最も多い症状はイライラで、71.2%が経験する。次いで胸が張る(痛くなる)が66.0%と続く。
・イライラや身体症状が出るため、約半数である52.8%が人に対しても不機嫌な態度をとってしまっている。
イライラの症状で、相手に対して”不機嫌な態度”をとってしまった方が多かった
このように、PMSはほぼ全ての女性が抱えている問題と言えます。また、周囲からは八つ当たりや怒りっぽいといった印象に取られてしまうことから、PMSは個人の問題では済みません。人間関係にまで支障が出てしまうのです。
月経前症候群・PMSの男性の認知度の低さ。でも女性のパートナーへの配慮は「高い傾向」に
男性については以下が分かりました。
・生理痛を知っているのは73.8%もいる一方で、PMSを少しでも知っている男性はわずか12.6%しかいなかった。
・PMSについて説明されれば、PMSが原因で仕事や学校、家事を休むことに理解を示す男性は73.4%もいる。
・妻や恋人がPMSだと気づくことができたら、55.3%は優しく接する、48.9%は家事を手伝うなど、女性をサポートする行動を取りたいと考えている。
PMSを知っている男性はわずか1割。しかし、妻や恋人がPMSだと分かれば約5割は「優しく接したい」と思う
このように、生理痛を知っている男性は比較的多いですが、PMSを知っている男性はほとんどいません。それでも妻や恋人がPMSで苦しんでいるのを分かってくれれば、いつも通り活動できないことに理解を示してくれるだけではなく、サポートしてくれる人が多いようです。
男性はどのようにしてPMSを知るのか。”真剣に考える”きっかけ作りにも。
小林製薬の調査でも分かった通り、月経前症候群でイライラを感じる方は7割にもおよび、約半数が周囲にイライラや怒りっぽさをぶつけてしまうこともある以上、パートナーや夫婦関係にも大きな影響を及ぼしかねません。そのため、PMSは女性だけの問題・本人だけの問題とは言えません。
男性の月経前症候群・PMS情報源は「学校の授業と恋人、インターネット」
男性のPMSに関する認識を明らかにするため、志田・山口は大学1年生の男性152名を対象にPMSの認知度を調べました。調査の結果、以下が分かりました。
・PMSについて知りたいと思っているのは48.0%いた。
・PMSを知った人の情報源は学校の授業からが5.9%、恋人からが3.9%、インターネットが2.6%。
・PMSの症状として認識されているのは、イライラが58.6%、憂鬱が40.1%、怒りやすいが39.5%と、精神症状が多かった
・学校教育でPMSについて教えてもらったほうがいいと思う人は62.5%いた。PMSを教えてもらったほうがよい理由として、「知っていたほうがいいから」、「女子への配慮ができるから」があげられていた。
このように、PMSについて知る機会がないから男性はPMSについてきちんと知らないこと分かりました。ただし、半数がPMSを知っていたほうがよいと思っていたことから、PMSの問題を男性も真剣に考えてくれるようです。
夫や恋人に月経前症候群・PMSの相談をしてみましょう
小林製薬や志田・山口の調査結果から分かることは、月経前症候群・PMSについて知ってくれれば男性も真剣に考えてくれるということです。日本だけではなく世界で見ても月経はタブーとされ、「またアレが来た…」というように人と話すのをためらう人は多いと思います。
辛い気持ちや症状を周囲の人たちに理解してもらう事は、”心や体の負担軽減”にも繋がります
でも、夫がPMSについてしっかり勉強したらサポートしてくれるようになって、PMSの症状が軽くなったという報告が海外ではされています。男性は女性とは体が違うため、月経のときはつらいことを分かってほしい…、察してほしいというのには難しいことです。男性も女性のPMSをしっかり考えてくれる姿勢でいる人が多いため、自分一人で我慢するのではなく、夫や恋人の力を借りてもよいのではないでしょうか。
また、月経に絡んだ症状というのは、「私だけではないから…」「みんな我慢して過ごしているもの」といった閉鎖的な想いを女性も抱いてしまいがちです。男性に理解を促すとともに、まずは月経に関連した、自分の体調や体質を知ってみることも、お互いに適切な理解や関係を築いていく上でも大切です。
まとめ
女性の問題と思われがちなPMSですが、PMSの存在が分かれば男性もきちんと考えてくれる人が少なくありません。一緒に住んでいる夫や恋人は「なんかイライラするときが頻繁にあるな」で「八つ当たりされた気分になった」「なんで急に攻撃的になるの?」と感じてしまうことも多くあると思います。
理由がわかれば、お互いの理解が深まりやすい
それが月経や女性ホルモンの影響に伴った症状であったとしても、理由が分からなければお互いの衝突につながるなど、夫や恋人も困りますし、サポートすることもできません。また、本人も症状や体調について正しく理解していることも大切です。恥ずかしいかもしれませんがお互いのためになりますので、ぜひ話しあってみてはいかがでしょうか。
文献
小林製薬 (2012). 2012年PMS(月経前症候群)に関する男女の意識調査 https://www.kobayashi.co.jp/corporate/news/report/pdf/v31.pdf
Rezaee, H., Mahamed, F. & Mazaheri, M. A. (2015). Does Spousal Support Can Decrease Women’s Premenstrual Syndrome Symptoms? Global Journal of Health Science, 8, 19-26.
志田佑佳子・山口典子 (2018). 大学生男子の月経前症候群に関する認識の実態調査 新潟医療福祉学会誌, 18, 78-78.
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など