気分変調症と気分循環性障害の違いとは
「気分変調症」と「気分循環性障害」の違いは何でしょうか?
気分変調症と気分循環性障害は、表記そのものの意味から得られる情報や、イメージできる病状が似通っているために、違いが分かりづらいと感じられることも多いと思います。
また、気分が変わるってこと自体は、多くの人たちにとってはよくある事であるにも関わらず、変調症や障害という病名がどうしてつけられているのか、日常生活を送る上で、区別がつきづらい部分かもしれません。
ここでは、「気分変調症」と「気分循環性障害」について解説をしております。
【気分変調症】抑うつ障害群にカテゴリーされている
気分変調症とは、持続性抑うつ障害とも呼ばれており、DSM-5では「抑うつ障害群」としてカテゴリ―されている疾患です。
「うつ病」の診断とまではいかないが、「抑うつ」が2年以上継続している
うつ病の診断に該当する抑うつエピソードを満たさない、軽度な抑うつ気分や、意欲や気力の低下が慢性的に継続し、2年間以上症状が続いていることが特徴です。また、診断時以前には、うつ病のエピソードを満たす時期も過去にあったかもしれないことを許容していますが、診断時にはうつ病や双極性障害などを満たすのであれば、「うつ病」「双極性障害」と診断されるべきであり、「気分変調症」とは診断されません。
また、「気分変調症」は、典型的な「うつ病」と違って周囲の人から「ぼうっとしていることが多い」「表情がなく思考が止まっているようにみえる」などど指摘されたり、心配されたりする状態というよりも、ご自身で「毎日が何となく辛くて怠い感じが続いている」「毎日がつまらなくて、憂うつだ」といった主観的な表現がとても多く、そのような気持ちから社会生活へも支障を来している状態という点は特徴かもしれません。
【気分循環性障害】双極性障害および関連障害群にカテゴリーされている
気分循環性障害とは気分循環症ともよばれ、DSM-5では双極性障害および関連障害群にカテゴリーされている疾患です。
「うつ病」や「双極性障害」までとはいかないまでも、「抑うつ」と「軽躁」症状を行ったり来たりしている
気分変調症の様に、抑うつエピソードを満たさない状態に加えて、双極性障害の診断にも必要とされる躁病エピソードを満たさない、軽度の抑うつ症状と軽度の躁症状が2年間以上にわたり慢性的に継続していることが特徴です。
また、DSM-5でもしっかりと位置付けられていることは、2年間の期間中、少なくとも半分は軽躁および抑うつを伴う期間が必要であるとされている点には注意です。
また、気分循環性障害の方はその「軽躁」症状のために、「怒りっぽさ」といった面も出やすく、周囲から気分屋と指摘されたりするだけではなく、社会的な立場を壊してしまったり信頼関係を崩して、夫婦間や友人間での問題に発展して人間関係も社会的な立場も不安定化させやすいことが特徴です。
【最後に】それぞれの治療について
気分循環性障害も気分変調症も基本的に、治療により症状を軽快させたり改善を目指すことができます。
治療薬は気分循環性障害であれば「双極性障害に準じた」薬物療法や、気分変調症であれば「うつ病に準じた」薬物療法が適切であるとされています。
自分の特性を知ることも大切です
しかし、特に気分循環性障害や気分変調症では、自分の特性を知ったり、認知行動療法や行動療法を重ねながら癖や周囲との関係性を少しづつ修復することを目指すこともあります。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など