不安障害の症状や原因、治療薬について
不安障害の「症状」
不安障害はさまざまな疾患をまとめて指す言葉です。不安障害の仲間に分類されるものには、主に以下のものがあります。
パニック障害
突然、強い不安に襲われる疾患です。呼吸が苦しくなったり冷や汗が出たりして「このままでは死んでしまうのでは?」と感じます。閉鎖された空間が苦手になり、電車やバス、飛行機を避けるようになるのが特徴です。
恐怖症
特定のものに対して強い恐怖心を抱く疾患です。何に恐怖心を抱くかは人それぞれで、代表的なものだと閉所恐怖症や高所恐怖症があります。
強迫性障害
手を洗っても洗っても汚い気がして何度も洗ってしまう、戸締まりを確認しても不安になって何度も家に帰ってしまうなどの症状が代表的です。不安を取り除くために過度な行動を繰り返してしまいます。
外傷後ストレス障害
PTSDと言われるもので、強いストレスを受けた後にフラッシュバックしたり悪夢を見たりなどの症状が続きます。うつ病を合併している方も少なくありません。
急性ストレス障害
強いストレスを受けた直後に感情や感覚がマヒしたり、一時的に記憶が飛んでしまったりするものです。時間が経つと自然に回復することがほとんどですが、中には外傷後ストレス障害に移行する方もいます。
全般性不安障害
実際に起こるかどうかわからないあらゆることに対して、過度に不安を抱いてしまう疾患です。たとえば「大きな病気になったらどうしよう」、「交通事故にあったらどうしよう」といった不安がほぼ毎日襲います。
不安障害の「原因」
不安障害になる原因はそれぞれの疾患によって異なります。
パニック障害
まだ原因はハッキリとわかっていませんが、セロトニンの不足によって起こると考えられています。
恐怖症
原因はよくわかっていません。
強迫性障害
ハッキリとした原因はわかっていませんが、脳内の神経伝達物質のセロトニンの不足によって起こると考えられています。
外傷後ストレス障害、急性ストレス障害
極めて強いストレスが原因となります。たとえば火事や事故、暴力などが代表的です。
全般性不安障害
原因はまだハッキリとはわかっていませんが、遺伝やもともとの性格が関係しているとも考えられています。
不安障害の「日常で気をつけたいこと」
パニック障害
パニック症状が強い時にはムリに外出しようとせず、できる行動から少しずつ慣らしていくことが大切です。負担にならない範囲で行動範囲を増やしていきましょう。
恐怖症
恐怖心を抱くものに少しずつ慣れていきましょう。とはいえ、もちろんムリをすると良くないので、少しずつ恐怖心の対象に慣らしていきます。
多くの方の場合は、一人で克服するというよりも、医療者を含めた理解者と一緒に取り組むんで行く事が大切です。
強迫性障害
薬を飲んで症状を抑えることもできます。症状の様子を見ながら、普段の生活で強迫行為を抑えられるように少しずつ慣らしていくことも大切です。
まずは回数を減らせることだけでも、成果として積み重ねていく上で大切です
外傷後ストレス障害、急性ストレス障害
時間が経つと自然に治るケースもありますが、中には自然回復せずに症状が続いてしまうこともあります。うつ病や不眠症へとつながることも少なくないので、症状が続く場合は認知行動療法や薬物療法で治療を行いましょう。
全般性不安障害
単なる心配性と混同されてしまうこともありますので、まずは自分の症状を自覚してみることはとても大切です。時として周りから「ただの心配性では?」といった誤った見方をされてしまう事があるために、まずは一番の理解者を得ることも、つらい症状でため込んでいたストレスを軽減することが可能となることがあります。
これらの不安障害の症状は精神療法や薬物療法で症状を和らげ、軽快させることができる疾患です。まずはご自身の症状や病気への理解がとても大切です。また、男性の方はうつ病から発症して経過していることもありますので、注意が必要です。
不安障害に使われる「治療薬」
それぞれの疾患によって選ぶ薬が異なります。ここでは睡眠薬のベルソムラ、パニック障害や外傷後ストレス障害に使うジェイゾロフト、強迫性障害に使うパキシルについて見てみましょう。
ベルソムラ(一般名スポレキサント)
覚醒に関わっているオレキシンという物質の働きを抑えることで、眠気を誘発するお薬です。不安障害によって不眠の症状原因が出ている方をサポートするために使われます。もちろん不安障害ではなく不眠症・睡眠障害を抱える方にも使われています。他の睡眠薬と違って自然な眠気を催すことがベルソムラの大きな特徴でしょう。依存性は少ないのですが、眠気が残りやすいデメリットもあります。
ジェイゾロフト(一般名セルトラリン)
パニック障害や外傷後ストレス障害の他に、うつ病やうつ状態にも適応を持つお薬です。セロトニンを選択的に増やす働きを持っています。パニック発作を予防したり外傷後ストレス障害に特有の症状を落ち着かせたりするのがジェイゾロフトの役割です。下痢や眠気などの副作用が知られていますが、効果と副作用のバランスが良いために使いやすいお薬として知られています。
パキシル(パロキセチン)
強迫性障害の他に、パニック障害やうつ病、社会不安障害などにも使われるお薬です。ジェイゾロフトと同じ仲間に分類されるお薬で、セロトニンの量を増やす働きがあります。成分量が5mg、10mg、20mgと細かくわかれているので、一人ひとりに合ったお薬の量を調節しやすくなっています。
ジェイゾロフトと比べると眠気や体重増加の副作用が出やすくなっていますが、使いやすさと効果の切れ味の良さが特徴とされています。
まとめ
不安障害とはパニック障害や強迫性障害などの疾患全般を指します。不安障害によって日常生活に支障が出てしまう疾患ですので、症状に応じて少しずつ生活しやすい環境を作ることが大切なのです。そのためにはまず自分の疾患について理解し、適切な対応・治療を始める必要があります。
まずは第一歩として、医療機関などへ受診して症状を相談してみることをおすすめいたします。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など