気分循環性障害・気分循環症とは
気分循環性障害と気分循環症とは
気分循環性障害・気分循環症は、軽い躁状態と、軽いうつ状態が交互に現れる状態で、このような気分の不安定さが2年以上、慢性的に継続していることが診断の前提になっています。
DSM-5での分類上は「双極性障害」
気分循環性障害も気分循環症も、DSM-5上での分類としては、「気分障害」を更に分岐した「双極性障害及び関連障害群」にカテゴリーされています。
軽い躁状態と軽い抑うつ状態の気分の不安定さが、この気分循環性障害と気分循環症の主症状であるために、しばしば臨床現場では「双極Ⅱ型障害」や「気分変調症」との診断の区分が重視されます。
気分循環性障害や気分循環症の学説は多様
しかし、気分循環性障害や気分循環症は生物学的には、「双極Ⅰ型障害の関連疾患である」という考え方や、パーソナリティー障害の概念が強いといった考えや、比較的若年発症の傾向にあるこの疾患が、「混沌とした社会の中での成熟過程や関係性による反応」といった考え方を持っている人たちもいるようです。
気分循環性障害・気分循環症の頻度とは
気分循環性障害や気分循環症の生涯有病率は約1%であるとされていますが、実際には「気分循環性障害や気分循環症」の世の中での認知度は非常に低いだけではなく、双極Ⅰ型障害と同様に精神症状であるという自覚症状が少ないために、潜在的な気分循環性障害や気分循環症の患者はもっと多く、約1%という数値よりも実際にはもっと高いと考えられています。
さらに、精神科外来に来院される患者さん全体では3~5%の頻度であると報告されています。
年齢層は15~25才の間に発症することが多く、男性よりも女性にかかりやすいと言われております。
境界性パーソナリティー障害との合併も高いと言われています
境界性パーソナリティ障害患者の約10%~20%に気分循環性障害や気分循環症を合併しているとも報告されています
気分循環性障害・気分循環症の「よくある困りごと」とは
人間関係での不和を招きやすい
気分循環性障害や気分循環症の方は周囲からは、「気分屋」「怒りっぽい」「問題行動が多い」「喧嘩っ早い」などの表現を受けることがあります。
特に、夫婦関係や家族関係の中で、関係性が不安定になって「受診」される方が多いです。また、聴取をしていると、学生のころから問題行動が多いとされたり、怒りっぽく周囲との人間関係が継続せず、「問題児扱い」あるいは「友人ができにくい」環境下で過ごされていた方も多くみえます。
軽いうつ状態と、軽い躁状態はしばしば急激に入れ替わることもあり、うつ状態と躁状態が混じった状態で不安定になり、大きな理由がなくても、他者への攻撃性や易怒性を極端に高めてしまう時も多く、人間関係は長期化しないことが多いです。またそのような症状のために、定職に継続して就けない、会社でも人事評価が著しく低いといった状態になりがちです。
感情がコントロールできない時があると、自覚していることも
また、ご自身で、気分の浮き沈みが時として「コントロールできない状態」であることを自覚していることもあります。
治療に関して
気分循環性障害や気分循環症の治療の基本は、双極性障害と同様に、気分安定薬などの治療が重要です。しかし、気分循環性障害や気分循環症は、一部はうつ病に移行する場合もあったり、双極Ⅱ型障害に移行する場合もあるなど、双極性障害やうつ病の発症の経過や悪化の経過檀家である事もあるので、症状の推移や経過を注意深く観察しながら治療の計画を立てていく事が大切な疾患であると考えられます。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など