不安神経症とは、不安症(AD)・神経症の分類の一種であり、全般性不安障害(GAD)やパニック障害(PD)などが挙げられます。ICD-9 での不安神経症の記載が、ICD-10では不安神経症の記載がなくなったのを境に、現在の臨床では全般性不安障害(不安神経症)として用いられることが多いのも特徴です
不安神経症とは状況や事柄に対する不釣り合いな不安症状や不安感情が強く出てしまうために、そのような強い不安感情をどうにかして緩和したい、あるいは避けたいと感じてしまいます。またそのような症状が出ることを恐怖に感じてしまったりなどで、他の不安症やうつ病を合併していることも多く、治療の経過を注意深くフォローしていく事が必要な疾患です。
不安神経症・全般性不安障害(GAD)では、日常のあらゆることが心配で不安になってしまいます。特に不安となる事柄の対象は、“可能性が低い心配事がずっと続いている”という症状が多いとされています。「(壁の小さな傷を見て)家が壊れてしまうのではないか不安」「(検診結果が良くても)何か自分が病気にかかっているのではないか不安」「(家族が元気でも)身内が死んでしまったらどうしよう」などといった感情が“ずっと長く”出てしまうのです。
もちろん、このような不測の事態は皆さんが日常的に心配したり、不安になる事柄ではありますが、不安神経症の方たちは自らの不安感情をコントロールできず、不安のために毎日が眠れなくなったり、不安が強くて食事や外出ができなくなったり、不安の感情がずっと付きまとって仕事に集中できないなどの、生活や身体面に影響を及ぼしてしまうのです。
不安神経症・全般性不安障害の症状初期には、周りからは心配性・気にしすぎと指摘されたりされたりすることにより、周囲に相談できずに、患者さん自らが我慢しすぎてしまったりしてしまうことも多いのです。
特に、毎日のように不安や倦怠感、一方で緊張感が継続するために頭痛や肩こり、しびれや痛みなどの身体症状をも呈しやすいという点はとても重要です。
また、パニック障害のように、強い緊張や不安が一気に高まると、動悸や息切れ、呼吸苦しといった症状が強く出てしまい、そのような強い身体症状のために日常生活が送れなくなっってしまったり、出勤や勤務が継続できないなどの症状が出てしまうのです。
もちろん、不安神経症は薬物治療だけではなく、認知行動療法(CBT)や暴露療法などに効果があるとされていますが、全般性不安障害(GAD)では特に不安対象がはっきりしないこともあるために、様々な精神療法を組み合わせて治療を行うことが多いです。
また、不安神経症や合併してしまったうつ病症状に対しては、抗うつ薬などのSSRIに治療効果があるといわれており、抗うつ薬を主体とした薬物療法を併用することもあります。当院は漢方などの治療もご提案しておりますので、お気軽にご相談くださいませ。
特に、不安症状の強さというのは本人にしか表現しづらい部分があり、他者から共感されづらく「心の弱さ」と周囲からも指摘されてしまう事もある為に、しばしば自己否定感が強く抑うつ状態に至ってしまっていることも多いです。もし、不安神経症かもと感じられましたら、お早めに医療機関へのご受診をお勧めいたします。
野村紀夫 監修
ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など