新型うつ病・非定型うつ病とは何でしょうか?
新型うつ病・非定型うつ病とは何でしょうか?
新型うつ病とは新しい概念であり、正式な病名ではありませんが、現代の多様なライフスタイルや価値観から生まれてきた、気分障害や適応障害の要素を含んでいる疾患です。
新型うつ病・非定型うつ病は、ストレス耐性のまだら低下が考えられます
新型うつ病・非定型うつ病とは、端的に表現をするとするのならば、ストレス耐性の低下と言えると思いますが、すべてのストレスに対して低下しているのではなく、まだらに低下しているのが特徴と言えると思います。ここでいうまだらとは、できたり・できなかったりすることが様々に現れたりすることです。
自分の趣味や楽しいと思えることは取り組めるけど、一旦家事や仕事・学業になると、体調が悪くなったり気分が悪くなってしまうというのも、この新型うつ病の特徴とされている、ストレス耐性がまだらに低下しているが故の影響だと考えられます。
特に、きっかけのストレスとして頻度の高い、職場の人間関係や仕事では、仕事の内容など複雑化しており、その両方を両立させながら仕事をこなすには、大変な苦労がかかる場合もあります。そのような場合には、ストレス耐性が人間関係で相対的に低い人たちにとっては、会社に居心地が悪く、また臨機応変さを求められる職場では、仕事でのストレス耐性が相対的に低い人たちにとっては、それでも会社がいづらくなってしまうかもしれません。
もちろん、ここでいうストレス耐性というのは、生まれつきの影響だけではなく、常日頃変動しており、その日の体調や、生育歴や日常生活歴やプライベートなどの影響を大きく受けることが知られています。
つまり、これまでの経験や性質・性格に大きく絡みながら、日々の体調やストレスの程度に応じて落ち込みや気分障害、不安な感情がでてしまい、生活や社会活動の一部が阻害されてしまう状態が新型うつ病なのです。
適応障害といわれ、ストレス反応に対する身体症状や精神症状を呈してしまう適応障害の慢性経過といわれることもあり、抑うつ症状や不安症状を強く呈する方も見えます。
また軽度の躁うつ病や、パーソナリティー障害でもストレス耐性がまだらに低い状態となることがあるために、新型うつ病と発症する場合も考えられます。
また、虐待などの成育歴だけではなく、周囲に対して過敏になってしまったり、自己否定感が強かったり、相手の顔色が気になって自分で決定できない傾向があったりなどの性質・性格を持たれている方も、新型うつ病などの傾向が強いともいわれています。
新型うつ病は慢性化しやすい?
特に新型うつ病は20代から30代の若者に多いとされております。心療内科や精神科受診時には軽症と考えられる症状で、かつ治療期間中も特段症状の悪化を呈することがなくても、長期化・慢性化しやすいというのが、新型うつ病の特徴です。
新型うつ病の治療の主体は、症状の緩和を図りながら、特にストレス耐性の低下という点に関しての改善を図っていく事になるのですが、この2つの方向性が長期化することによって、時として両立しづらくなりやすいという点が、治療が長期化しやすい原因なのかもしれません。
特に新型うつ病の治療では、初期は、なんだか怠いという倦怠感・抑うつ症状・不安症状などを、仕事や家庭などの負荷のかかる場所で症状が出やすくなるために、自信の喪失や自己嫌悪に陥り、日常生活のリズムも大きく崩しやすくなります。心身のバランスを大きく崩すと更に気分障害の程度は大きくなってしまうために、抗うつ薬であるSSRIや抗不安薬などの薬物治療を併用しながら症状の緩和や心身のバランスの改善を図っていきます。
もちろんうつ病の治療同様に、うつ症状や治療の必要に応じて、自宅療養をする事も重要なのですが、新型うつ病で特に注意すべきことは症状が落ち着いている時には、生活のリズムを崩さないことや外出などのリズムを積極的につけることでもあると考えられます。
新型うつ病治療で重要なのは、各種専門職に頼りながら、治療サポートや活動に、取り組んでいく事が新型うつ病の改善に重要です
特に新型うつ病の特徴である、ストレス耐性の低下という点に関しては、ストレスから離れて生活をする時間が長ければ長いほど、ストレス耐性がさらに低下して病状の回復を遅くさせてしまうことがあるのです。
そのために、症状が許す限りに、日常生活のリズムづくり、外出、その後は他者とのかかわりなどの接点を増やしてくことが重要となります。もちろん、うつ病症状に応じた取り組みという点が大前提として重要ですので無理は禁物です。
一方で、新型うつ病・非定型うつ病の治療である、ストレス耐性の低下に対する改善というのは、現代社会において非常に難しい事でもあります。会社というストレスから離れて自宅にいても、買い物ですら自宅からネットで行えたりしてしまったり、自宅にいる時間の多くをインターネットなどで過ごしていても暇を感じないこともあるからです。
また、人間関係や会話に関しても、直接人に会わなくても、インターネットである程度補うこともできますし、その場合は孤立感や寂しさも軽減できるかもしれません。
つまりは、わざわざストレスを感じることをしなくても、生活や社会生活を別のストレスの関りにくい環境で取り組めてしまうという現代社会の仕組みや便利さが、ストレスに対する耐性をより低下させているのかもしれません。また、人間の特徴としても、生活習慣や生活スタイルを変えることは非常に難しく、その場合は薬ではなく、誰かのサポートを必要としないと生活習慣や・生活スタイルを変えることができない場合が多いのです。
そのために、新型うつ病では、お薬治療による症状の緩和や外来通院の継続などの取り組みを経て、自己否定の強さの見直しや、自分の過敏さの影響へとつながる考え方のクセなどを見直す取り組みや、認知行動療法などを用いながら、できることを増やしていく事の自信回復を促していく事も治療効果としては非常に高いと考えられます。また生活の環境調整などを心理士と取り組んだり、訪問看護や、精神保健福祉士と相談しながら就労支援や就労移行、またリワーク施設での関わり合いや、サポートを経て徐々に慣れていく事が重要かと思います。
このような取り組みは、患者さん本人だけで計画して自分で取り組むにはいささか負担が大きくなってしまうので、多くの専門職のサポートや知識を経て、回復への取り組みを考えていく事が、新型うつ病の治療をより効果的に進めていくために必要なことなのです。
新型うつ病に関しては、お気軽に心療内科・精神科・メンタルクリニックまでご相談くださいませ。
野村紀夫 監修
ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など