全般性不安障害ではあらゆる事に対して不安の感情が出てしまうのです
全般性不安障害
全般性不安障害(全般不安症)とは不安症の一つで、生活全般にわたってあらゆる不安や心配が、とめどなく押し寄せてきてしまう疾患です。そのような多岐にわたる不安の感情のために、これまで行えていた日常生活がスムーズに送ることができずに、生活機能の障害と苦痛を来してしまっている状態が、全般性不安障害なのです。また、不安症・不安障害には、パニック障害、社交不安障害、全般性不安障害が含まれています。
一般的には不安の感情というのは、何らかのはっきりした理由に対して不安の感情が生じ、ある期間を過ぎると不安の感情も消失するとされています。しかし、全般性不安障害の方が抱かれる不安というのは、日常生活の様々な出来事や活動に対する理由の定まらない不安や心配が中心で、そのような不安の感情は消失せず、コントロールしたりすることができないために、日常生活の様々な出来事や活動に対して制限や支障をきたしてしまう程、不安の感情が長時間続いてしまうのです。
全般性不安障害で感じる不安というのは、しばしば憂慮するべき出来事に釣り合わない程の、不安感情が出てしまうために、周りからは「気にしすぎ」「そんなわけない」と言われたり、周囲が想像もつかない場面で不安の感情を抱くことで「心配性」を通り越して「変わり者」扱いを受けてしまうこともあります。
子どもや青年の場合は、学校の成績や、スポーツの出来映えや大会、更には兄弟や両親の心配をし、年配者は家族の幸せや自分の健康についてよく心配することが多いとされています。
本人も心配が過ぎることの自覚はありますが、そうであったとしても自分でのその不安の感情を忘れ去ろうとしたり、気にしないように何とかしようとしても、頭から不安の感情がこびりついて離すことができず、一日中漠然と不安の感情で過ごしたり、何か行動を起こすことで、不吉なことや不利益なことが起きるのではないかとして、日常の生活をスムーズに取り組むことができなくなってしまうのが、全般性不安障害なのです。
全般性不安障害の頻度
全般性不安障害の生涯有病率は約3~5%とされており、女性が男性より多いといわれています。
全般性不安障害の症状について
仕事や学業、将来、天災、事故、病気などの様々な出来事または活動について、過剰な不安と心配が出てしまいます。
不安や心配と感じている状態が6か月以上続いてしまう。不安や心配が毎日のように出現してしまうなどの特徴があります。
以下に症状の例を挙げました。
・そわそわと落ち着かず、緊張や過敏の症状が出てしまう
・疲れやすく、だるい
・動悸や息切れ、のどの違和感
・めまい、ふらつき、目が回る感じ
・集中できない、心が空虚な感じがする
・刺激に対して過敏になってしまう
・頭痛や肩こり、こわばりなど緊張している
・眠れない、熟睡感がなく、眠りが浅くなってしまうなどがある
全般性不安障害の治療法
薬物療法
薬物治療としては、抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)のフルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラム、その他にSNRIなどがあります。
また、抗不安薬として、ベンゾジアゼピンも併用されることもありますが、全般性不安障害の特徴としては、漫然と継続する不安や心配であるために、作用時間などの配慮などの調整が必要となることがあります。
また、抗うつ薬であるSSRIは、治療効果の立ち上がりに数週間かかることがあるために、即効性の高いベンゾジアゼピンを併用しながら抗うつ薬の治療効果の安定を図ることもあります。
精神療法など
不安、緊張、恐怖によって、一時的に機能不全に至った心の働きを治療者がサポートすることは必要です。受容、共感的態度で話しを聞くだけではなく、患者様が不安や心配の感情や言葉で表現することを促すことによって、心の働きを病前の状態に回復させ、現実の状況に適応できるようにすることを目的としているのです。
また、認知行動療法も有用であると言われています。環境刺激であるストレスとその反応である感情・認知(ここでは不安や心配などの思考)・身体(自律神経)・行動の変化との相互作用を検討して、精神障害、ストレス反応において生じている不安感情の悪循環を断つことにより、全般性不安障害の症状の改善や問題の解決を図ろうとする治療法です。
ただし、全般性不安障害の方たちは、漠然と不安や心配を抱えていることが多いために、不安の対象物をはっきりさせるというよりも、患者本人が抱える感情に焦点を当てて治療を行うとスムーズに進むことがあるという点も、他の疾患と異なる特徴であると考えられます。
全般性不安障害の注意点
全般性不安障害の方は、不安や心配を継続的に感じていることにより、それに伴う体の緊張を伴っていることも多いのです。そのために、肩こりや頭痛、その他には発汗やめまいなどの身体症状を伴っていることも多く、自律神経失調症の症状を併発していることも多いのです。このような身体症状が更に、ご本人さんの心配を大きくし、将来や自分の健康に対する不安や心配などの感情を大きくさせ、全般性不安障害の症状を更に悪化させている可能性も十分にあるということも念頭に置いておく必要があると考えられます。
もし、身近な方に全般性不安障害の方が見えた場合には、本人が不安を感じている対象物やその感情を否定するのではなく、本人の症状に傾聴しながら、本人自身がその不安感情に対して困っていること、治していきたいという気持ちをサポートしてあげる姿勢が望ましいと思います。適切な治療を行えば、全般性不安障害は症状の軽減を目指すことが可能な疾患ですので、我慢なさらずに医療機関へのご相談をお勧めいたします
野村紀夫 監修
ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など